研究実績の概要 |
本研究は、地域在住中高年者からの無作為抽出者を対象とした国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)の対象者約2,200名を10年間追跡した学際的縦断調査データを用いて、1)脳局所容積の10年間の加齢変化の個人差を明らかにし、2)脳局所容積の加齢変化と認知機能、幸福感の加齢変化の経時的な相互関係を明らかにすることを目的としている。前年度は、10年後の追跡調査であるNILS-LSA第9次調査を完遂し(最終登録者数1,689名)、認知機能、幸福感等のデータのクリーンアップ作業を行ったうとともに、並行して頭部MRI画像の前処理(SPM8を用いたセグメンテーション等)、脳局所容積の抽出(longitudinal FreeSurfer)を進めた。当該年度には、引き続き、頭部MRI画像の前処理及び脳局所容積の抽出作業を行い完遂し、10年間の脳画像縦断データベースの構築した。さらに、下記の解析を行った。(1)脳局所容積(前頭葉・頭頂葉・後頭葉・側頭葉・海馬・扁桃体・島・視床・基底核・帯状回・間脳・小脳)の加齢変化を検討し、海馬、後頭葉、側頭葉の萎縮が顕著であるのに対して、島・視床・基底核・帯状回などの萎縮は緩やかであることを明らかにした。(2)海馬の加齢変化に着目し、性、教育年数、APOEε4保有/非保有との関連を検討し、男性、APOEε4保有者において海馬の萎縮が顕著であることを明らかにした。(3)本研究の主要なアウトカムである認知機能の加齢変化と教育年数、APOEε4の関連を検討し、教育年数は認知機能の低下と関連しないこと、APOEε4保有の場合には高齢期の認知機能低下が顕著であることを明らかにした。地域住民の頭部MRI3次元画像の長期的変化を同一プロトコールを用いて追跡する研究は稀少であり、意義があると考えられる。
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