本年度は、まずこれまでに調査した現代のエゴマ栽培や収穫、利用の方法についての成果を、計画研究A02班(土器に残る動植物痕跡の形態学的研究)ミニセミナーにて発表した。また、本年度も現代のエゴマ栽培や収穫、利用の方法についての聞き取り調査を行い、エゴマの果実を穂から外す方法や、果実と夾雑物の選別方法には様々な方法があることが分かった。また、昨年度に引き続き、一個体の土器に多量に圧痕として残るシソ属と比較検討するため、現生のシソ属のシソやエゴマの果実を収集し、標本として整理した。さらにエゴマの栽培実験を、条件を変えて複数の条件下で行い、生育環境による成長の差を観察するとともに、未成熟な状態のエゴマの果実と成熟した状態のエゴマの果実を採集し、観察と計測作業を進めた。また、多量圧痕土器の資料数を増やすための調査として、縄文時代の複数の遺跡から出土した土器について、圧痕調査を継続的に実施したほか、縄文時代から弥生時代へ移行する時期の遺跡の土器圧痕調査も実施し、シソ属果実圧痕を検出した。シソ属やニワトコの圧痕が一個体に多数確認された縄文時代前期の土器については、X線CT撮影と観察を行い、種実が繊維とともに土器胎土内にもよく混ざっている状況を確認した。土器との比較検討のため、現生のシソ属果実を混入した粘土板を焼成し、あわせてX線CT撮影を行った。X線CT観察の成果は、日本文化財科学会第39回大会にて発表した。
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