昨年度から引き続き6世紀の須恵器を対象とし、マルチヘッド・マルチタスクモデルを使用して型式と年代について教師付き機械学習を行った。昨年度よりも3Dデータの解像度を上げて学習を行うとともに、正解ラベルごとに資料数の偏りがあることを補うことで、精度の向上を図った。具体的には128voxelでの試行と、損失関数の重みづけである。昨年度来問題となったのは、通常機械学習を行う際に供される資料数よりも、現状で考古資料を資料として学習を行う際には十分な数を揃えるのが難しいということである。今年度は特にこの少ない資料数で機械学習を行い十分な成果を得る方法についての考察が主眼となった。なお資料数については奈良県立橿原考古学研究所附属博物館の協力を得て、新たに48点の資料の3Dモデル化を行うことができた。 成果として、東京国立博物館の資料を用いた学習では、まず6世紀を5段階に分ける型式の学習については58.65%の正解率であった。これは損失関数の重みづけをしない場合よりも5%程度改善されている。また6世紀を3段階に分けた年代の学習では、正解率は71.15%であった。これは損失関数の重みづけをしない場合とは2%程度の差しか出なかったが、資料数の偏りが少なかったことによる。型式、年代の学習ともに、不正解の多くは正解の前後の段階に収まるものが多い。昨年度に試行したデータ拡張と合わせて、資料数が少ない場合でも方法の工夫によって一定の成果を収めることができるものと考えるが、なお正解率は十分に高いとは言えない。今後はより資料数を増やし、最低限必要な資料数について考慮したい。
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