公募研究
本研究の目的は、異なる生業・農耕文化を持つ各地域・時代の集団で人骨の同位体分析により動物性食物(肉)の利用を復元し、動物利用の地域差や身分差に伴う食肉の階層性を検証することである。本年は、四川省の営盤山文化の営盤山遺跡、宝敦文化の高山遺跡で人骨・動物骨のアミノ酸窒素同位体分析を行い、この地域の食習慣の復元を行った。四川省の営盤山遺跡(3300~2600 cal BC)は周辺の小規模集落をまとめる中心集落と見なされている。四川省の山間部に位置しており、高山遺跡が立地する成都平原とは異なる文化の集団が居住していたとされる。不自然な姿勢で棺もない人骨が多数出土しており、これらは犠牲として殺された人物と考えられている。そのため、本課題では犠牲人骨の出自と動物利用を明らかにするために食習慣復元を行った。アミノ酸の窒素同位体分析では、営盤山人骨と高山人骨共に水産資源の寄与がほとんど見られなった。また哺乳類の中では家畜ブタと見なされるイノシシ類が主要な食肉源であったと思われる。営盤山遺跡と高山遺跡の集団は、植物食資源としてイネ食と水田稲作を取り入れたが、長江下流域の新石器時代遺跡とは異なり、水田に伴う淡水産の動物資源利用の習慣はすぐには取り入れなかったようである。また、家畜ブタの導入後は家畜ブタへの依存を高めていったと考えられている。水田稲作を取り入れたにもかかわらず長江下流域とは異なる生業や動物利用を行った背景ととして、これらの遺跡が急峻な谷の間に位置しているという環境要因や四川盆地の文化的要因を合わせて検討する必要がある。営盤山遺跡と高山遺跡の分析結果はArchaeometryに公表した。また国際会議 Society for East Asian Archaeologyで成果を口頭発表した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Archaeometry
巻: 0 ページ: 1-16
10.1111/arcm.12848
Frontiers in Ecology and Evolution
巻: 10 ページ: 1-15
10.3389/fevo.2022.944104
https://chugokubunmei.jp/