本研究では、新石器時代晩期の陝西省を中心とする黄河中流域の瓦を起点として、中国における瓦の起源と青銅器時代初期までの発展過程を解明し、併せて、その背景としての初期国家形成期の集団間関係を再構することを目的とする。 2023年8月からは、橋村、石マオ、鄭州商城など、瓦が出土した黄河中流域の新石器時代、青銅器時代の遺跡へ赴き、現地調査を行った。調査では、瓦の様式と法量だけではなく、製作痕と使用痕も観察・記録し、遺跡ごとに、瓦のデータベースを作った。その後、資料整理と報告書の執筆に集中している。石マオ遺跡出土瓦の整理報告がすでに完成し、現地研究者との共同研究として、石マオ遺跡の発掘報告書に掲載される予定である。 蘆山マオ遺跡出土瓦の論文「Roof tile production at the Lushanmao Site: a case study of Neolithic roof tiles in China」がすでに完成し、Archaeological Research in Asiaに投稿された。蘆山マオ遺跡の「円弧形丸瓦・凹字形平瓦」と違って、石マオ遺跡の瓦は、「円弧形丸瓦・円弧形平瓦」の組み合わせであり、歴史時代の中国瓦とよく似ている。二つの初期瓦の系譜はともに新石器時代晩期の黄河中流域に創出され、春秋戦国時代になると、前者は後者に取って代わられたと考えている。一枚作りの「凹字形平瓦」と比べると、円弧形の瓦は、効率的に生産できる。それが原因で、「円弧形丸瓦・円弧形平瓦」、さらにその生産技術は、効率性が求められる歴史時代の瓦生産に継承されただろう。 公募研究の期間が終了しても、中国国家形成期の瓦に対する研究を続けていく。これからは、残した遺跡の瓦報告書を完成し、そして、新石器時代晩期~青銅器時代における二つの瓦系譜に関する論文を投稿する予定がある。
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