本研究の目的は、クルアーンを人々に伝える媒体がどのように変化しているか、またそれによってイスラーム的コネクティビティがどのように変容しているかを明らかにすることにある。 本研究課題ではまず、クルアーンのみならず、ソーシャルメディアとイスラームの教え・実践の関係について焦点をあてた先行研究を精査した。先行研究での論点を、研究発表に記載の論考等で発表しつつ、2022年度は新型コロナウイルス感染症の影響で渡航が制限されていたために主にインターネット上の調査を、2022年度後半から2023年度はフィールド調査を行った。インターネット上の調査では、クルアーンやイスラームに関する情報を発信するインフルエンサーとその投稿内容について、調査助手とともにデータを収集した。フィールド調査では、チュニジア、バングラディッシュ、インドネシア、マレーシアなどでインタビューを主とした調査を行った。 研究課題を通しての成果は、口頭発表二回、ニュースレターでのエッセイ一稿、編著本への章分担とエッセイをそれぞれ一稿、Webページ上のエッセイ一稿となった。申請時の想定よりも少ない発表数となったが、関連分野の研究者らと研究会などを行い、今後の研究に寄与する議論を行ったことが、一つの成果にあげられる。例えば2022年7月9日と11月25日~27日には、中東イスラーム世界・フィールド研究会と連携した研究集会を香川大学で行い、中東地域研究分野の研究者らと議論を交わした。2023年2月2日・3日には、インドネシアの宗教間対話と政教関係についての共同研究者と合同で、香川県内のモスクにおいてインタビュー調査を行い、研究発表を行った。これらの活動により、本研究課題やそれを発展させた課題についての新たな視座を得たのみならず、関連分野の研究者との新たなネットワークを構築することができ、今後の研究への大きな寄与が期待できる。
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