本研究は、計量テキスト分析とネットワーク分析という2つの手法を用いて、中東イスラーム世界で政治社会の分断がどのように、そして、なぜ促進されているのかという問題を解明することを目的とする。具体的には、新聞や声明文などのイスラーム主義組織の刊行物、ソーシャルメディアなどのデータを、計量テキスト分析とネットワーク分析という最新の手法を用いて分析し、その結果を既存の地域研究的手法と合わせて解釈することによって、イスラーム主義組織がどのように人々を動員し、それがいかにして政治社会の分断を促進しているのかという問題を解明する。 本年度は昨年度収集したTwitterのデータの分析を進めた。具体的には、Twiiter上に投稿されたイスラーム主義組織によるツイートと、イスラーム主義組織にかかわるツイートを収拾し、巨大なコーパスを形成したうえで、計量テキスト分析の手法を用いて、シーア派イスラーム主義組織がどのように政治動員を行い、これに対して、人々がどのような認識を持っているのか、その変遷について、可視化するとともに、実証的に明らかにした。具体的には、LSSと呼ばれる半教師あり機械学習によって、動員にかかわる感情温度などを計算し、その時系列的な変化をプロットした。その結果をもとに、辞書分析などを合わせて回帰分析にかけて、国内外の政治変化にかかわる重大局面ごとに動員がどのように変化していったのかを分析した。 本研究課題は、シーア派イスラーム主義組織がどのように政治動員を進め、それがいかにして分断を促進しているのかという問題を、計量テキスト分析とネットワーク分析の2つの方法論を用いて解明しようとする点に新しさがある。既存の定性的な分析に、計量テキスト分析とネットワーク分析という量的な分析を加えて有機的分析することで、イスラーム主義運動の新たな実態を解明する。
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