本研究は計画の主旨と目的に沿って、第2年目(最終年度)として、次の研究活動を行った。(1)理論的視座の「ヌズム論」を活用できる後期の史資料を中心として、互助の信頼学の特徴を探り、信頼の動機と結果に関する概念的分析を行った。信頼の形成や維持、そしてその影響について深く掘り下げ、イスラーム法と社会における信頼の重要性を一部明らかにすることができた。また、この分析を通じてイスラーム福祉制度における信頼関係の成立要因や結果についての理解を深めることができた。(2)学際的研究:デジタル化社会における人間存在をめぐる現代哲学の立場、イスラーム金融における民事紛争の解決策の現代的発展をめぐる知見などと、(1)での新しい知見を交差させて、学際的な視点を発展させた(次年度に論文投稿をおこなう予定)。(3)事例研究:ブロックチェーン技術を活用しているイスラーム福祉制度として、特にワクフ(寄進財産)における事例として、Finterraのワクフチェーン「マイワクフ(mywaqf)」のデジタル・プラット・フォームを通じて活用されているブロックチェーンについて、考察をおこなった。また、そのような新技術において信頼の活性化が促進される方法を考究した。本研究は最終年度として、研究の包括的な分析や結果をまとめる作業をおこなったので、それを学術的な研究報告や論文として刊行する準備を進めている。
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