研究領域 | 動的エキシトンの学理構築と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
21H05388
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長尾 一哲 金沢大学, 薬学系, 助教 (50825164)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
|
キーワード | 可視光酸化還元触媒 / コバルト触媒 / ブレンステッド酸触媒 / ヒドロアルコキシ化 / ラジカルー極性交差反応 |
研究実績の概要 |
本研究は、フェノチアジンもしくはチアントレンをドナー部位として有するドナー/アクセプター分子を新規に設計合成し、ドナー分子由来の硫黄カチオンラジカルを利用した高難度分子変換技術の開発を目指す。具体的には、【研究1】硫黄ラジカルカチオンを活用したラジカルー極性交差プロセスによるカルボカチオン種の発生と炭素ー酸素結合形成反応への応用、【研究2】 硫黄ラジカルカチオンを活用したアレーンのsp2炭素-水素結合直接官能基化に取り組む。本年度は以下の成果が得られた。
1) 可視光照射下、ベンゾ[b]フェノチアジン型有機光酸化還元触媒、コバルト触媒、ブレンステッド酸触媒のハイブリッド触媒システムによるアルコールを用いた脂肪族アルケンのヒドロアルコキシ化反応を見出した。アルコールを用いた脂肪族アルケンのヒドロアルコキシ化反応は、安価な原料から合成価値の高いアルキルエーテルを構築する単純かつ原子効率に優れた手法の一つである。従来の手法は強力なブレンステッド酸やルイス酸を必要とするため、官能基許容性に問題があった。本年度開発した手法は官能基許容性が高く、強酸に弱い官能基を適用することができた。アルコール以外にも水、脂肪族・芳香族カルボン酸が求核剤として利用することができた。当量反応と量子化学計算や活用した反応機構解析により、ベンゾ[b]フェノチアジン型有機光酸化還元触媒の励起状態はコバルト(II)触媒への一電子移動、その後に生じるベンゾ[b]フェノチアジンラジカルカチオンはアルキルラジカル等価体と見なすことができるアルキルコバルト(III)種の一電子酸化に関与していることがわかった。 2) 上記の当量反応を行うにあたり、ベンゾ[b]フェノチアジンラジカルカチオン種の単離に成功した。ベンゾ[b]フェノチアジンを一電子酸化剤で処理することで高い収率でラジカルカチオン種を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度見出したベンゾ[b]フェノチアジン型有機光酸化還元触媒、コバルト触媒、ブレンステッド酸触媒のハイブリッド触媒システムによるアルコールを用いた脂肪族アルケンへのヒドロアルコキシ化反応は学会発表と論文投稿(査読中)を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度見出したベンゾ[b]フェノチアジン型有機光酸化還元触媒、コバルト触媒、ブレンステッド酸触媒のハイブリッド触媒システムの高効率化を分子触媒の設計から実現する。一方で、単離したベンゾ[b]フェノチアジンラジカルカチオンの分光学的性質を明らかにするとともに、芳香族求電子置換反応への応用を試みる。
|