研究領域 | 動的エキシトンの学理構築と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
21H05390
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
南保 正和 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (10705528)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 動的エキシトン / スルホン / ラジカル / 光活性化 / 炭素-スルホニル結合活性化 |
研究実績の概要 |
本研究では動的エキシトン形成を鍵とする有機ラジカル種の新しい発生法を開拓することを目的とする。本年度はスルホニル基上にドナー・アクセプターユニットを組み込む独自の分子設計によって、可視光照射で駆動するラジカル活性種の発生を検証した。スルホニル基上に様々な置換基を検討したところ、ドナーとして多環式芳香属炭化水素を導入したアルキルスルホン誘導体をアミン共存下青色LED照射によってアルキルラジカルが生じ、これをラジカル補足剤でトラップすることで発生を確認することに成功した。スルホニル基上が他の官能基では全く反応が進行しなかったことから、励起した多環式芳香属炭化水素からの1電子移動が起こっていることが示唆された。また本研究の過程で、光照射下にて芳香族化合物の位置特異的な炭素-水素結合のアルキル化が進行することを見出した。従来の芳香族化合物のアルキル化にはフリーデル-クラフツ反応が用いられてきたが、本反応におけるアルキル化の位置は完全に異なるという興味深い結果が得られた。これはカルボカチオンを経由する従来の反応機構とは異なることを意味しており、新しい光ラジカル反応であると考えている。現在反応条件の最適化を行なっている段階であるが、入手、調製容易な化合物を用いて実施できる点からも新規有機機能性材料の開発に貢献できる。 今回見出した多環式芳香属炭化水素を基軸とした反応は非常に温和な条件でラジカル種を発生できる手法であるといえる。ラジカルの発生過程を含め、詳細な反応機構については実験的、理論的解析を進めている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目に計画した内容であるラジカル発生を確認することができ、予定通りに実施できた。達成度は(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
まず見出した光アルキル化反応の反応条件を最適化する。スルホニル基の置換基や光照射条件、溶媒などの与える影響の調査を行う。その後、様々な構造を有するアルキルスルホンや芳香族化合物の基質一般性を確認する。また実験および理論化学的な手法を用いて詳細な反応機構の解明を行う。特に基質の1電子還元機能、炭素-スルホニル結合解離過程、アルキル化の位置特異性を調査する。なお本課題は領域内の共同研究によって強力に推進予定である。 また見出したラジカル発生法を生体環境下での活用への展開を目指し、水中での機能発現を狙う。まずスルホニル基上に水溶性置換基を導入することで水溶性の改善を行い、水溶液中でのラジカル発生が可能か検証を行う。発生の確認はラジカル補足剤や蛍光プローブを用いて行い、最終的には生きた細胞内でのラジカル発生に挑戦する。
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