公募研究
我々はこれまで、本研究領域の山田グループ、小堀グループと共同でジケトピロロピロール連結テトラベンゾポルフィリン(DPP-BP)とフラーレン誘導体(PCBM)との低分子系バルクヘテロ接合型(BHJ)薄膜試料について、時間分解テラヘルツ分光法、時間分解過渡吸収法により励起子や電荷分離状態、電荷キャリアのダイナミクスについて調べてきた。これまでの研究からのアルキル鎖長が4のC4-DPP-BP:PCBM BHJ太陽電池の光電変換効率は5.2 %となり、鎖長が10のC10-DPP-BP:PCBMの場合(0.19 %)よりも大幅に向上していることが分かっている。テラヘルツ光を用いた測定では、C4-DPP-BPとC10-DPP-BP BHJ薄膜試料で電荷キャリアの移動度に違いが観測されなかった。この結果は、電荷キャリアの局所的な移動度が分子配列やモルフォロジーに大きく依存しないことを意味している。また、これまでの研究の多くはn型有機半導体として、フラーレン誘導体を用いたものが大半であり、近年注目を集めている非フラーレン系アクセプターを用いたBHJ薄膜試料に適用した研究例はない。我々は時間分解テラヘルツ分光法により、PBDB-T:ITIC、PBDB-T:Y6 BHJ薄膜試料の電荷キャリアダイナミクスを測定した。現在、測定に適した成膜条件や励起光強度依存性の測定などを検討している。
2: おおむね順調に進展している
これまで、ジケトピロロピロール連結テトラベンゾポルフィリンを中心とした低分子系バルクヘテロ接合型(BHJ)薄膜試料の電荷キャリアダイナミクスについて研究を行ってきた。この研究で得られた結果は今年度、論文や総説として発表することができ、研究はおおむね順調に進展している。また、これまで時間分解テラヘルツ分光法による研究例のなかった非フラーレン系アクセプターを用いたBHJ薄膜試料の測定も行うことができ、興味深い結果を得ることができた。
今後は非フラーレン系アクセプターを用いたバルクヘテロ接合型薄膜試料を中心に、成膜条件の検討を行い、励起光強度依存性の測定などを行うことにより、電荷キャリアダイナミクスの詳細について明らかにしていく。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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