ピロール系ホウ素錯体を基盤としたアクセプター・ドナー・アクセプター型色素の合成を通じて、(1)可視域から近赤外領域における高い蛍光量子収率の実現、(2)外部からのストレスを検知するメカノクロミック発光性色素、(3)軸不斉に基づく円偏光発光材料の創製、を検討した。 (1)の研究では、対称型の4核ホウ素錯体の合成により、緑色から橙色発光を示す強発光性色素の合成を達成し、60%から100%となる高い蛍光量子収率を示す色素の開発を達成した。また非対称型の3核ホウ素錯体の合成により、分子内ドナー・アクセプター相互作用に偏りが生じた結果、赤色から近赤外領域に発光を示す強発光性色素の合成を達成した。量子収率は30%程度であったが、この領域では優れた機能と有していると考えられる。(2)の研究では、対称型の4核ホウ素錯体が、単結晶構造や計算化学による再安定構造において屈曲した構造を有していることに着目し、この色素をポリウレタン等のエラストマー材料に共有結合で架橋した材料の創製を行った。得られた試験片を引張試験機で延伸しながら発光スペクトル測定を行ったところ、励起光照射下において黄緑色発光から橙色発光へと変化するメカノクロミック挙動が観測された。本研究内容について論文投稿の準備中である。(3)の研究では、対称型の4核ホウ素錯体に軸不斉部位を導入することで、キラルカラムによる光学分割を行ったサンプルが、円二色性および円偏光発光特性を示すことを見出した。構造変化による発光色の多色化についても達成した。 以上のように提案内容について研究を実施し、目的とした成果をあげることができた。
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