本研究課題では、有機薄膜太陽電池界面における電荷移動型エキシトンの動的過程を解明すべく、(i) 初期生成した電荷移動型エキシトンは構造緩和し、弱く束縛した電子ポーラロン・正孔ポーラロン対(電荷移動状態)を形成すること、(ii) Hot Processの場合電荷移動状態が基底状態との振電相互作用による緩和をせずに直接解離してフリーな電子ポーラロンと、正孔ポーラロンになって拡散すると予測の元、エキシトン状態における振電相互作用について理論的研究を行ってきた。 中でも、短絡電流密度、開放電圧が異なるBTAxアクセプター分子に対して、ドナー分子PTB7のバルクヘテロ接合D/Aモデル系に着目する。ωB97XD/6-31G(d)レベルで、D/A界面における吸収スペクトル、HOMO-LUMOバンドギャップ、D*―A*状態間の電子的カップリング、電荷移動から電荷解離へのエネルギーバリアの計算を行った。 これらの系をまとめると、Jscが最も大きいBTA3/PTB7が電荷移動距離も長い、つまりエキシトンのサイズが大きいことが確認できた。また、D*/A*間の励起エネルギー移動よりエキシトンのサイズが大きいほど、短絡電流密度が大きくなる傾向がわかった。これは、高効率な有機太陽電池では、D側で生成したフレンケル型エキシトンが界面で電荷移動型エキシトンとなり、その大きさ(電子-正孔距離)が、変換効率と相関があると考えられる。次に、初期生成電荷移動型エキシトンの電荷移動状態への緩和、電荷移動状態の電子基底状態への緩和、すなわち再結合過程は、これらの状態における振電相互作用に支配されるとの観点から、光吸収、光発光過程での振電相互作用、すなわちエキシトン-フォノンの結合の強さに着目した。D/A複合体励起状態で構造が安定化すると電荷移動距離が大きくなり、基底状態への非断熱緩和を起こし易いとの結果が得られた。
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