研究領域 | 動的エキシトンの学理構築と機能開拓 |
研究課題/領域番号 |
21H05408
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
小田 晋 関西学院大学, 理学部, 助教 (00789901)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 熱活性化遅延蛍光 / 多重共鳴効果 / 色純度 / 有機ホウ素 |
研究実績の概要 |
有機 EL 素子は,応答速度やコントラスト比に優れており,ディスプレイ分野での実用化が進んでいるが,エネルギー変換効率に課題を残している。そこで近年,100% 近い内部量子効率(IQE)が可能な熱活性化遅延蛍光(TADF)材料の開発が盛んに行われている。しかし,TADF 材料は,一般に幅広な発光スペクトルを示すことから,照明には適しているが,高い色純度を必要とするディスプレイには不向きである。これに対し研究代表者の所属研究室では,ホウ素と窒素の「多重共鳴効果」により,励起一重項状態と励起三重項状態のエネルギー差の縮小と励起状態における構造変化の抑制に成功し,最大 IQE が 100% に達しながら,スペクトル半値幅が小さく極めて色純度に優れた青色発光を示す TADF 材料(DABNA)の開発に成功した。しかし,蛍光材料を用いた素子と比較すると素子寿命が短く,TADF 材料としての実用には至っていない。そこで,本研究では,動的エキシトンの制御により,最高レベルのエネルギー変換効率と実用レベルの耐久性を兼ね備えた青色TADF 素子の開発を行った。 具体的には,逆項間交差速度定数の向上を目的として,DABNAの縮環三量体構造をもつ含BN拡張ヘリセン(V-DABNA-Mes)の合成を行った。V-DABNA-Mesは半値幅16 nmのスカイブルー発光を示し,逆項間交差速度定数は4.4×10^5 s-1と大きく,優れたTADF材料として期待される。実際に,V-DABNA-Mesを発光材料として用いた塗布型有機EL素子を作製したところ,発光極大波長480 nmの挟帯域発光を示し,最大外部量子効率は22.9%と良好な値を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り,one-shotホウ素化反応により含BN拡張ヘリセン(V-DABNA-Mes)の合成に成功している。また,V-DABNA-Mesの逆項間交差速度定数は,従来のDABNA類縁体と比較して向上しており,有機EL素子の発光材料として有用であるを示した。
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今後の研究の推進方策 |
V-DABNA-Mesは半値幅16 nmの幅狭な発光スペクトルおよび大きな逆項間交差速度定数(4.4×10^5 s-1)を示したものの,発光波長が484nmと,有機ELディスプレイの青色素子に要求される波長(460 nm)よりも長い結果となった。今後,π共役系拡張や母骨格中の窒素原子を他のヘテロ原子に置換することで発光色の調整を行う予定である。
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