研究領域 | 次世代アストロケミストリー:素過程理解に基づく学理の再構築 |
研究課題/領域番号 |
21H05414
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大場 康弘 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (00507535)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | ヘキサメチレンテトラミン / HMT / 光化学反応 / 星間分子雲 / アミノ酸 / 炭素質隕石 / 分子進化 |
研究実績の概要 |
今年度は,水,アンモニア,一酸化炭素(CO),メタノールを含む模擬星間塵氷への真空紫外光照射によるヘキサメチレンテトラミン(HMT)生成実験をおこなった。その際,反応基板温度を10ケルビン(K)と77Kの2種類設定し,生成量の温度依存性を検証した。その結果,反応基板温度が低いほうがHMT生成量が低い(10Kの1/10程度)ことが明らかになった。反応基板温度の違いが及ぼす影響のうち,もっとも顕著なのがCOが基板上に吸着可能かどうかである。つまり,77KではCOが基板に吸着できず,光化学反応に関与できないことが,HMT生成を制約していると結論できる。 星間分子雲で生成したHMTが,星形成後の熱水プロセスでどのように変化するのかを明らかにするために,10Kでの光化学反応で作製したHMTを含む複雑有機物合物をアモルファスケイ酸塩粉末と水とともに100℃で加熱した。10日程度加熱すると大半のHMTは分解されてしまった。一方,アミノ酸をはじめとする種々の有機化合物がその加熱によって生成することが,液体クロマトグラフ-飛行時間型質量分析計による分析で確かめられた。従来の研究では,光化学反応で生成した複雑有機物を分析操作中に意図的に酸加水分解したとき,もしくはHMTをギ酸や酢酸など有機酸とともに加熱したときにアミノ酸生成が確認されていた。本研究では,光化学反応のみで生成した有機物を加熱するだけでアミノ酸が生成可能であることがわかった。これは,HMTが現実的な小惑星環境でもアミノ酸生成の材料となることを強く示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時期を考えると,おおむね予定通り研究遂行できたといえる
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今後の研究の推進方策 |
炭素質隕石からのヘキサメチレンテトラミン(HMT)検出をすすめ,無機成分分析等から明らかにされている,隕石母天体上での熱水活動の程度との相関を見出す。さらに様々な光化学反応条件で作製したHMTを含む複雑有機物の加熱実験を遂行し,HMTの複雑分子生成の材料としての役割を詳細に理解する。さらに,現有のイオンピックアップ装置を用いたHMT生成経路の解明にもとりかかる。
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