研究領域 | 次世代アストロケミストリー:素過程理解に基づく学理の再構築 |
研究課題/領域番号 |
21H05419
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
堀 優太 筑波大学, 計算科学研究センター, 助教 (40806915)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
|
キーワード | ホモキラリティー / アミノ酸 / 酸化プロピレン / 量子化学計算 |
研究実績の概要 |
星間空間で観測されたキラル分子である酸化プロピレンを取り上げ、その宇宙空間での生成過程について量子化学計算による解析を行った。反応中の各経路をエネルギー的に結びつけることができるポテンシャルエネルギーダイアグラムを構築することによりその反応経路探索を行った。計算により、エネルギーがダウンヒルに進む経路を見つけ、酸化プロピレンが生成しうる2つの経路を見つけることができた。 また、酸化プロピレンおよびその生成経路中に現れるキラルな中間体に対して、円偏光吸収特性を時間依存密度汎関数理論(TDDFT)により調べた。特に宇宙空間で発生するライマンα波長領域(121.6 nm付近)に吸収ピークが見られることから、星間空間中でライマンα波によるキラル分子の選択的分解が起こりうることが予想された。したがって、宇宙空間で発生する円偏光波によって酸化プロピレンのホモキラリティー(R体 or S体の鏡像異性体の過剰生成)が発生しうることを理論的に予測することができた。 また、アミノ酸ホモキラリティーの発生起源を調べるために、アミノ酸生成に注目した。アミノ酸を含む異性体を網羅的に探索できる計算プログラムを開発し、アミノ酸生成に至るあらゆる異性体分子を探索し、その安定性を量子化学計算を用いてエネルギーを計算することにより議論した。アミノ酸ホモキラリティーを議論する上ではアミノ酸生成前の前駆体に注目する必要があることを突き止めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
量子化学計算により、酸化プロピレンの生成過程およびその円偏光吸収特性について議論した。これらの結果は現在学術誌に投稿中である。 また、アミノ酸ホモキラリティーの発生起源を調べるためにアミノ酸生成に至るあらゆる(異性体)分子を探索しその安定性を議論することにより、アミノ酸ホモキラリティーを議論する上ではアミノ酸生成前の前駆体に注目する必要があることを突き止めた。これらの結果は現在学術誌に投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
アミノ酸としてマーチソン隕石中に含まれていたアラニン、バリン、イソバリンを取り上げる。星間空間でアラニンが生成する場合、グリシンにメチル基が付加する反応とグリシンを経由しない反応が考えられる。そこで、これら2つの反応経路を取り上げ、種々の素反応を仮定し、DFTおよびCCSD(T)による量子化学計算を用いてこれらの反応経路のポテンシャルエネルギー曲面を構築することによって最適な反応経路を決定する。 それぞれの反応経路に登場するキラル分子の円偏光吸収特性をTDDFTにより調べる。円偏光吸収強度から、異性体過剰量を算出する。これらの分子の円偏光吸収特性を比較することで、どの分子が異性体過剰形成に寄与したのかを考察する。アラニン生成経路の進みやすさやキラル分子の円偏光吸収の特徴を先行研究と比較することで、アラニンの異性体過剰形成のシナリオを考察する。 当該領域の共同研究を進展させる。
|