研究領域 | 次世代アストロケミストリー:素過程理解に基づく学理の再構築 |
研究課題/領域番号 |
21H05434
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
水瀬 賢太 北里大学, 理学部, 講師 (70613157)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 分子分光学 / レーザー化学 / 分子動画 / 波動関数 / 回転分光 / イオン分子反応 / 分子クラスター |
研究実績の概要 |
本研究は、星間化学の理解・予測に必要なイオン-分子間の高精度ポテンシャルの構築、および新規星間分子イオンの同定のため、広範な分子イオンや分子イオン錯体に適用可能な、汎用・高感度・広帯域・高分解能分光法を開発し、星間イオン化学の発展に寄与することを目的とするものである。初年度の研究では、分子振動・回転運動の実時間観測に基づく新しいタイプの振動分光・回転分光を達成した。これまでに他のグループや、研究者自身によっても、同種の実験が行われてきたが、今回、高い信号計数率と高い空間分解能を両立する画像観測装置を組み合わせることで、既存の分光法よりも1桁周波数分解能を向上させることに成功した。具体的な対象として、希ガス集合体、有機分子集合体について、その回転運動や分子間振動の観測に成功した。特にアルカン分子系では、隣に分子がいるにもかかわらず、分子同士は自由に回転しつつも適度な分子間距離を保って存在することが明らかになった。これはアルキル基同士の緩い相互作用の分子論的本質を示す成果である。現在さらなるサポート実験を行っている。初年度に測定対象とした系は、生成が比較的容易な中性分子種であったため、イオン種への展開を目指す本研究においては、原理検証としての位置づけの実験であったが、分子間相互作用研究における重要なベンチマークの一つになる結果が得られた。測定によって周波数分解能や信号計数率が十分であることが確認できたため、イオン種への適用を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた、分子運動観測に基づく分光実験の原理検証と、重要分子系への展開が進んでいるため、順調といえる。特に、安定な長光路光学系の構築に成功したため、想定よりも高い、10MHz級の周波数分解能が達成できたことは大きな成果といえる。イオン種への適用に関しては、予定通り、予備実験としてイオン源を開発できた。総合的に判断し、おおむね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究では、いよいよ開発した手法をイオン種に適用する。開発したイオン源からのイオンを、独自の画像観測まで運ぶ部分の開発が必要となる。効率的に、かつレーザー照射領域にイオンビームを収束させるための電極設計を行っていく。検出側は、すでに十分な信号計数率を達成しているため、電極製作が完了し次第、イオン種の測定を試行する。イオンの高分解能分光実験を行ううえで困難となる、イオン種の内部エネルギーの高さに関しては、別途整備中の冷却イオントラップとの組み合わせで対処を行う。初めの対象として、NO+や有機小分子イオンを取り上げ、いくつかについては既報があるため、比較検証を行う。その後、分子クラスターイオンに適用範囲を広げ、イオン分子反応に関わる分子間相互作用の解明につなげていく。
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