本研究では,宇宙における奇妙なキラル分子選択の謎を,星間塵ナノ微粒子を舞台としたナノ光科学として捉え,従来の望遠鏡による観測に,実験室における独自の顕微分析手法を融合し,科学的に解明を試みるものである。 近接場ナノ円偏光は,配向した星間塵と偏光した光により,ナノ微粒子の表面に局所的に発生する。宇宙におけるアミノ酸分子の検出に加え,微粒子の配向と偏光した光を,望遠鏡により観測し,その知見に基づき,微視的な分子のキラリティ選択機構を実験室の顕微鏡下で再現・直接観察することにより,一連のホモキラリティ発現シナリオの完成を目指す。 本年度は,宇宙を模した環境での顕微イメージング分析を行うために前年度までに設計・調達した低温,真空下で計測が行える光学系とイメージングシステムの組み立て,動作確認を進めてきた。星間塵ナノ微粒子のモデル試料の作成については,電子線描画法等による作成に加え,その「凝集体構造」については強く集光した光による光捕捉技術も用いて行った(現在,併行して,電磁気学に基づく数値計算による系統的な評価も進めている)。今後,上記の方法で作成した星間塵ナノ微粒子表面上に発現する近接場ナノ円偏光の低温,真空下での評価等を実験的に進める。また,提唱しているホモキラリティ発現のシナリオの表面科学的な視点における妥当性については,原子・分子スケールの表面吸着構造や表面電位分布の詳細を中心に外部の専門家とともに議論,検証に取り組んでいる。
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