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2021 年度 実績報告書

銀河動力学と超低質量暗黒物質粒子の理論に基づく暗黒物質の解明

公募研究

研究領域ダークマターの正体は何か?- 広大なディスカバリースペースの網羅的研究
研究課題/領域番号 21H05448
研究機関東北大学

研究代表者

千葉 柾司  東北大学, 理学研究科, 教授 (50217246)

研究期間 (年度) 2021-09-10 – 2023-03-31
キーワード暗黒物質
研究実績の概要

標準理論である冷たい暗黒物質モデルに代わる暗黒物質候補で、最近注目されている超低質量暗黒物質粒子(個々の質量が10の-22乗ev程度の粒子)のいわゆるFuzzy Dark Matter(FDM)と呼ばれている暗黒物質の性質を調べた。具体的には、FDMに基づく矮小銀河スケールの暗黒物質ハロー形成の数値シミュレーションを実施し、その密度分布構造などを解析した。FDMによる構造形成の計算は、その波としての特性からシュレディンガー方程式を同時に解く必要があって複雑であるが、これまでになく多数の場合について計算を実行することができた。その結果、暗黒物質ハローの密度分布が中心部のソリトンコアと外側のハロー部に分けられ、後者の密度分布に有意な分散が存在することを見出した。すなわち、中心のコア質量と外側のハロー質量との間に一定の分散があり、先行研究で出された分散がない関係式を変更する必要があることを発見した。この結果は、学術雑誌の論文として掲載された。
また、このような理論予想と比較して、実際の恒星系の運動の観測からどのように暗黒物質ハローの分布を引き出すかが重要となる。本研究では、これまでによく用いられてきた2次のジーンズ方程式をさらに発展させて、高次である4次の速度モーメントを使った解析方法を開発している。この方法を用いることによって、これまでの2次モーメントである速度分散を用いた解析で直面していたモデル内の縮退を解くことができ、より正確な暗黒物質ハローの分布を導出することができる。実際、この方法は高次の速度分布が得られるような精度の高い観測データに対して適用できるもので、今後すばる望遠鏡を用いた観測プロジェクトにて利用されるべく開発を進めている状況である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

FDMモデルに基づいた暗黒物質ハローの形成に関する計算は順調に進み、その結果は当該年度内に学術雑誌に論文として掲載されている。恒星系の運動解析に基づいた暗黒物質ハローの導出方法の開発も一定の進展があり、今後さらに発展できる見込みになっている。

今後の研究の推進方策

FDMに基づいた暗黒物質ハローの計算をさらに進め、近年矮小銀河スケールにて報告されている回転曲線のダイバーシティ、すなわち暗黒物質の密度分布の多様性について理論的な予想をまとめる。また、コア質量とハロー質量の関係の分散に関して、潮汐場といった環境依存性があるかどうか、どのような物理量がこの分散を与えているかをさらに分析したい。
観測データの解析方法に関して、高次の速度モーメントを用いた解析をさらに進めると同時に、別の方法である恒星系の軌道の重ね合わせに基づく、いわゆるシュバルツシルドモデルの開発にも着手したい。このように複数の解析方法を開発し採用することによって、より系統誤差のない精密な暗黒物質分布を導出することを目指していきたい。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [国際共同研究] マックスプランク研究所(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      マックスプランク研究所
  • [国際共同研究] プリンストン大学(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      プリンストン大学
  • [雑誌論文] The diversity of core-halo structure in the fuzzy dark matter model2022

    • 著者名/発表者名
      Hei Yin J. Chan, Elisa G. Ferreira, Simon May, Kohei Hayashi, Masashi Chiba
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 511 ページ: 943-952

    • DOI

      10.1093/mnras/stac063

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] The Global Structure of the Milky Way's Stellar Halo Based on the Orbits of Local Metal-poor Stars2022

    • 著者名/発表者名
      Genta Sato, Masashi Chiba
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 927 ページ: 145-160

    • DOI

      10.3847/1538-4357/ac47fb

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 銀河系矮小銀河の化学動力学進化と星形成史2022

    • 著者名/発表者名
      林航平、平居悠、石山智明、千葉柾司
    • 学会等名
      日本天文学会春季年会
  • [学会発表] Gaiaデータを用いた銀河系恒星ハローの広領域の化学動力学構造2021

    • 著者名/発表者名
      佐藤元太、千葉柾司
    • 学会等名
      日本天文学会秋季年会
  • [学会発表] HSCとGaiaデータを用いた銀河系ハローサブ構造の恒星種族と運動2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木善久、千葉柾司、林航平、小宮山裕、田中賢幸、Scott G. Carlsten
    • 学会等名
      日本天文学会秋季年会
  • [学会発表] 局所銀河群外におけるミッシングサテライト問題への統計的検証2021

    • 著者名/発表者名
      梨本真志、田中賢幸、千葉柾司、林航平、小宮山裕
    • 学会等名
      日本天文学会秋季年会
  • [学会発表] Revisiting the core-halo structure of FDM model2021

    • 著者名/発表者名
      Jowett Chan, Masashi Chiba, Kohei Hayashi, Elisa Ferreira, Simon May
    • 学会等名
      Workshop on Very Light Dark Matter 2021
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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