公募研究
我々は、冷たいダークマター (CDM) 理論に基づいてスーパーコンピュータ「アテルイII」を用いた新たな大規模N体シミュレーションに適用して、モデル銀河・活動銀河核カタログ Uchuu-ν2GC を構築し、web上で公開した。これは、他に類を見ない広い計算領域を扱うモデルカタログである。しかし、銀河やAGNの数密度、空間相関は、ダークマターの性質からも大きな影響を受ける可能性がある。 本研究では、小スケールの構造形成を抑制する温かいダークマター(WDM)モデルが AGN の統計量にどのような影響を与えるのかを、ダークマターハローの合体形成史と準解析的銀河・AGN形成モデルを用いて明らかにした。我々は、モンテカルロ法を用いて様々なWDM質量を仮定したときのダークマターハロー合体史を構築した。これを準解析的銀河・AGN形成モデルと組み合わせることで、WDMモデルが高赤方偏移での超巨大ブラックホール(SMBH)とAGNの統計量に与える影響を調べた。 その結果、赤方偏移4以上において、WDM質量の違いが低質量SMBH質量関数と低光度AGNの光度関数に大きな影響を与えることが分かった。特に、1keV WDM を仮定 した場合、CDM に比べて個数密度が ~0.5 dex 減少することを示した。WDMモデルの結果は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) の観測によって近年示唆されている、宇宙初期の多量のAGNの存在と整合しない。さらに、既存の観測と矛盾しない範囲で小スケールの密度ゆらぎを増加させた場合においても、JWST で示唆されるAGNの個数を説明できないという初期成果を得た。本研究により、AGN 観測量がダークマターモデルに強い制限を与えることが明らかになると共に、JWST の観測結果と理論モデルの詳細な比較検討が必要であることが分かった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
我々の準解析的銀河形成モデルを、国立天文台のスーパーコンピュータ「アテルイII」を用いた大規模N体シミュレーションに適用し、モデル銀河・活動銀河核 カタログ Uchuu-ν2GC を作成、公開した。
すべて 2024 2023 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 525 ページ: 3879~3895
10.1093/mnras/stad2401
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 75 ページ: 1246~1261
10.1093/pasj/psad066
https://www.skiesanduniverses.org/Simulations/Uchuu/DR2Products/