研究実績の概要 |
アセンブリ・バイアスは銀河団内部の質量以外の性質と銀河団の周辺環境の相関のことである。15年程度前にN体シミュレーションを用いた理論的研究で銀河団の形成時刻と周辺環境の相関などが存在することが指摘されてきたが、観測的な検出が試みられ始めたのはここ5年程度である。 本年度は以下に述べるアセンプリ・バイアスの観測的研究を進めた。まず、SDSSで検出されたz<0.12の約600個の銀河団を、実際に観測された宇宙の大規模構造を再現するN体シミュレーション(Elucidシミュレーション; Wang H. et al., 2014, ApJ, 794, 94)で記録されている銀河団の形成時刻で銀河団サンプルを分けた。それぞれのサンプルで銀河団と銀河の相互相関を取ることで、大スケールに現れるバイアスの大きさを測定するとともに、弱重力レンズ効果を用いて銀河団の質量を測定し、銀河団の質量に依存するバイアス成分を取り除き、アセンブリ・バイアスを取り出すことを試みた。その結果、銀河団の現在の質量の20%に達する時刻でサンプルを分けた場合、サブサンプル間のバイアスの大きさの違いを6sigmaで検出した。これは、観測的に銀河団の形成時刻を推定するのが困難な状況の中、実際の大規模構造を再現するN体シミュレーションを用いることでアセンブリ・バイアスを検出しようというユニークな研究である。この結果は論文としてまとめ(arXiv:2202.01795)、現在査読中である。 また、スプラッシュバック半径に関しては、eROSITAサーベイで得られたX線銀河団サンプルとHSCで観測された銀河の銀河団-銀河相互相関関数を測定することでX線輝度とスプラッシュバック半径の大きさの相関を調べる研究をIUCAAのSurhud More氏と開始した。
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