研究領域 | ダークマターの正体は何か?- 広大なディスカバリースペースの網羅的研究 |
研究課題/領域番号 |
21H05461
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鶴 剛 京都大学, 理学研究科, 教授 (10243007)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | アクシオン / 暗黒物質 / SOIPIX / X線 |
研究実績の概要 |
2020年6月,XENON1T実験より太陽アクシオン起源と解釈可能な信号が初めて得られた.アクシオン以外の可能性も残るが,アクシオン起源であった場合には,電子,光子,原子核それぞれとの相互作用の混合と解釈される.アクシオンの背後の物理を探るには,相互作用ごとに特化した測定が喫緊である.そこで独自の「イベント駆動型X線SOIPIX」を用いる2つの実験,テーブルトップ型の「ISAI実験」と次世代硬X線衛星FORCEによる「ALPINE観測」を開始する.それぞれの実験は原子核または光子との相互作用に特化しており,混合の不定性が無い.ISAI実験で従来を超える感度でアクシオンを探索し,アクシオンの質量や原子核との相互作用の強さに対し,過去最高の制限をつける.さらにISAI実験で得た知見から,衛星搭載用SOIPIXの高性能化を行い,FORCE衛星とALPINE観測の実現性を高める.今年度は,ISAI実験システム構築として,下記を行った.(1) 本研究開始前までに行っていた全体の構成の検討をさらに進め,それぞれのコンポーネントの間のインターフェースを決定した.(2) SOIPIXを低温動作させ暗電流を抑えるため,恒温槽を京都大に導入した(東大の共同研究者の小貫氏より借用).(3) アクシオンの標的となるFe-57を導入した.(4) 4素子のイベント駆動型X線SOIPIXと,アクティブシールドのアンチコインシデンスのとり方を検討した.(5) (4)に基づきSOIPIXの読み出しシステムを検討し,必要な読み出し回路基板の導入を行った.(6) アクティブシールドの部材の製造を行い,組み立て方式の検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のISAI実験で使用する重要なコンポーネントは「イベント駆動型X線SOIPIX」「アクティブシールド(シンチレータ)」「パッシブシールド(鉛,無酸素銅)」「恒温槽」である.全体的な構成は,本研究開始前に検討済みであった.本予算の採択による研究開始を受け,今年度はその検討を進め,実際に設計する段階に到達した.今年度はそれぞれにコンポーネント間のインターフェースを検討し,その決定に従って,次年度にコンポーネントごとに独立して準備を行うという方針をとった.「イベント駆動型X線SOIPIX」と「アクティブシールド」はそれぞれ独立した開発であったが,その両者からのデータをどのように収集し,コインシデンスを取るかを決定した.これを受けて,それぞれの具体的な読み出し方も決定した.「アクティブシールド(シンチレータ)」「パッシブシールド(鉛,無酸素銅)」の配置の再検討も行った.また,Fe-57は高価でありリードタイムも長くかかる可能性があったが,順調に入手することができた(入手には他の予算を利用).それぞれにコンポーネントのインターフェースの検討はほぼ終了することができたため,概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討を受け,次年度の前半はコンポーネント毎の準備を進める.半導体不足の状況もあり,読み出し回路を準備できるかの懸念があったが,新規の読み出し回路開発を最小限にすることができたので,順調に準備が進むと予測している.それを組み合わせ,年度後半には試験観測を開始したいと考えている.現在の計画では,イベント駆動型X線SOIPIXとして,過去に開発した素子(XRPIX7)を使用する予定である.並行して,別の予算で新たに高い性能を持つ素子を開発している.この開発の進展次第では,どこかの時点でXRPIX7から新素子に切り替えることも検討したいと考えている.
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