研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
21H05470
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
木俣 基 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20462517)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 有機FET / 金属絶縁体転移 / 空間反転対称性の破れ / フェルミ面 / 電界誘起超伝導 |
研究実績の概要 |
本研究では強相関分子性絶縁体の表面に光反応性の分子膜を修飾した「光駆動型FET」を中心対象として、結晶表面で発現する二次元電子の局在ー非局在ー超伝導転移の機構解明や、分子性結晶の表面に起因する特異な超伝導物性、さらには非相反伝導などの新規な物理現象の開拓を目的として研究を行う。
初年度は主に、実験上必須となる強磁場中での高感度な伝導計測系の構築、光誘起FETの作製に必要な実験環境の構築、極低温までの強磁場超伝導相図の決定を行った。強磁場超伝導相図の決定においては、所属機関の高磁場無冷媒超伝導マグネットを用いて、最低温度0.5Kまでの測定を、磁場が二次元面垂直と、平行の場合について決定した。試料の超伝導転移温度は約9ケルビンである。実験の結果、磁場が面平行の場合には、24テスラの強磁場中においても、極低温では超伝導が生き残ることを見出した。これは単純な理論予測から期待される上部臨界磁場を大きく超えるものであり、結晶表面における超伝導の特異な性質を示唆するものである。さらに、20テスラ以上の強磁場領域においては、超伝導相図が高磁場側に伸びる振る舞いを観測した。これは高磁場中でFFLO超伝導などの新規相の存在を期待させるものである。また磁場が面垂直の場合においては、約9Kの転移温度に対して、上部臨界磁場がバルクの有機超伝導試料よりも極低温でより増強される振る舞いを観測した。このような特異な超伝導相図が有機結晶表面で生じる超伝導で観測されたことはこの系の超伝導状態を理解する上で重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的の一つである、強磁場超伝導相図を決定した。さらに、特に磁場が面平行の配置では、20T以上の磁場で臨界磁場が高磁場側に伸びる振る舞いを観測するなど、結晶表面で期待される超伝導の強い二次元性に起因すると考えられる特異な現象を観測できたため。
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今後の研究の推進方策 |
一方で、磁場が面垂直な配置では、フェルミ面の直接検出に対応する量子振動の観測を目的とした実験を行ったが、24テスラまでの磁場領域では現在のところ信号は観測できていない。今後、50テスラ級のパルス強磁場中での測定を行い、引き続き量子振動の観測を目指す。また、分子性結晶表面の空間反転対称性の破れに起因する非相反伝導など新規物理現象の開拓を行う。
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