研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
21H05471
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 孝彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20241565)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 分子性結晶 / ランダムネス効果 / 電子機能性 |
研究実績の概要 |
本研究では,高密度電子共役系を舞台としたパイ電子の電荷・スピン秩序形成とその量子的非秩序状態創成に対するランダムネスの役割解明に取り組み,巨大な電子応答・非平衡現象の根源となるランダムネスが誘起する新電子機能物性を開拓し,ランダムネス導入による未踏機能発現,ランダムネスサイエンス学理の形成を目指す. [1] 分子性有機結晶に対するエックス線照射による分子欠陥導入と評価 本計画による人為的な導入以外の欠陥や乱れを極力少なくした良質単結晶試料の準備を研究協力者と共同して行った.これらの良質試料に対して,エックス線照射による分子欠陥の導入実験を照射専用エックス線発生装置により行い,単一結晶中に精度の高い連続した乱れ(照射量)導入を行った.これらの照射量を連続制御した試料に対して,赤外光学局所領域走査測定を行い分子振動観測・解析により分子欠陥導入量の定量的評価を行った. [2] ランダムネスが誘起する量子液体・ガラス化状態の広帯域低エネルギー分光 ランダムネスを導入したパイ電子系分子性電荷秩序絶縁体物質やモット絶縁体物質の低エネルギー電荷状態を,遠赤外-赤外領域の光学応答やノイズ分光から詳細に調べた.ランダムネスを導入した強相関モット系分子性有機超伝導体の遠赤外-赤外領域での反射スペクトル測定から得られる光学伝導度から,ソフトクーロンギャップと考えられるギャップレス絶縁体状態が観測された.この状態は,モット転移近傍の相関の強いパイ電子系にランダムネスが作用して出現したものと考えられる.現在,理論的考察を含めて解析を進めている.また,電荷秩序絶縁体系パイ電荷ガラス状態において,電子ノイズ測定による低エネルギー状態研究を海外研究協力者と進め,乱れを含む分子構造とパイ電荷ダイナミクスの相関を明らかにすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,エックス線照射によるランダムネスの導入により生じる単結晶中の分子欠陥の生成状態に対して赤外反射分光のマッピング測定により評価を進めることができた.今後の分子欠陥/ランダムネスとパイ電子系電子機能性の相関を研究する上での基盤となる成果である.また,海外研究協力者と進めている分子構造とパイ電子ダイナミクス相関のノイズ実験研究について成果論文発表を行った.現在,この成果を進展させてエックス線照射分子乱れを導入する共同研究を進めている.このように,当初計画通りに研究は進捗していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
エックス線照射による分子欠陥導入において,分子構造中の-CN結合部に構造乱れが集中的に表れることが研究の進展に伴い明らかになりつつある.このことをさらに明らかにするためには,-CNを構造に含むパイ電子機能性物質に対象を広げていく必要がある.本学術変革領域内外との共同研究を進めることで,ランダムネスと電子機能性相関の一般化を進めていく.
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