研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
21H05477
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
秋根 茂久 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (30323265)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 積層構造 / 配位結合 / 金属錯体 / 非共有結合的相互作用 / π平面 |
研究実績の概要 |
芳香環が密に重なった構造は、新規電子物性の観点から注目を集めている。とくに、多環芳香族π電子系がグラファイトの層間距離を超えて近接する構造の構築の合理的な方法論の確立は、本学術変革領域「高密度共役」において推進すべき重要な課題となっている。π平面分子が自然に積層するときの距離はグラファイトの層間距離とほぼ同等となるので、これを超えて近接させるためには斥力を凌駕するだけの強い構造制御法が必要となる。そのような積極的な「近接のための力」として、本研究では、金属・配位子間の配位結合形成に着目した。配位結合の結合エネルギーは金属・配位子の組み合わせによっては共有結合なみの大きさとなるため、これを用いてπ平面を強制的に接近させることができると期待される。 このようなπ平面構造としてペリレンビスイミド骨格に着目した。金属配位結合形成によって二つのペリレンビスイミド部位が接近する分子として、3,3'位に二つのペリレンビスイミド部位を導入したsalen配位子を設計した。まず、3位にアミノ基を有するサリチルアルデヒド誘導体を合成し、これとペリレンテトラカルボン酸二無水物の反応により前駆体となる分子を合成した。この化合物をエチレンジアミンと反応させてsalen配位子を合成し、これにニッケル(II)などの金属イオンを導入することで、二つのペリレンビスイミド部位を有するsalen 錯体を合成した。また、平面型大環状コバルト錯体へのπ平面型架橋配位子の導入法についても検討を行い、配位子交換による方法が効果的であることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、二つの芳香環が近接した構造となるようなsalen型錯体を合成することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
合成した金属錯体における芳香環同士の相互作用について、各種スペクトルおよび計算科学的手法を活用して評価するとともに、より近接効果の高い新たな金属錯体の合成も試みる。
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