研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
21H05481
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
茅原 栄一 京都大学, 化学研究所, 助教 (10610553)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | トポロジー / 環状π共役分子 / シクロパラフェニレン / シクロファン / 高密度共役 / スルースペース共役 |
研究実績の概要 |
直交するπ電子系を融合すると、π共役のねじれが生じる。そのようなπ共役分子のトポロジーの変化は、新たな物性発現の可能性から興味深い。実際、メビウスの輪構造を持つπ共役分子の合成法として、直交するπ軌道を持つ二つのユニットを融合させることがすでに提案されているが、それを実現できたのはこれまで1例のみだけであった。一方で、環状構造を持つ、シクロパラフェニレン(CPP)は分子の面内から放射状に広がったπ軌道を持つことから、通常の平面構造を持つπ共役分子と融合することで、メビウスπ共役分子の一般性の高い合成法を開発できるのではと考えた。 実際には、CPPを合成する中間体を用い、その分子にエチレンユニットやオルトフェニレンユニットを挿入することで、メビウストポロジーを持つCPP誘導体1および置換体2の合成に成功した。さらに1, 2はいずれも結晶状態においてパラフェニレンの回転が抑制されているため、メビウス構造を持つことが分かった。なお、1の溶液状態では、パラフェニレンの回転のためにメビウス構造が消失するが、2では溶液状態でも低温でメビウス構造を保っていることを明らかにした。また、比較のために、二つのエチレンユニットを導入した3も合成し、これが二重ねじれ構造を持つことも明らかにした。さらに、3では、対面するパラフェニレンの一部が、van der Waals半径の和より短い距離で近接しており、空間を介した共役(スルースペース共役)が発現しており、分子内空間におけるπ電子系の高密度化に適した骨格であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を進める上で鍵となる化合物の合成が順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
得られたシクロファン骨格をもとに、分子内空間におけるπ電子系の高密度化に適した分子設計を行う。
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