研究実績の概要 |
本研究では、ヘテロパイ共役電子系の共役平面の外側に張り出した複数の孤立有電子対を、結晶工学的手法によって圧縮集積し、孤立電子対の重なりを経由した新たな高密度共役の発現とその学理の構築を目標とする。具体的には、ピラジン、2つのピラジン環が縮環したピラジノピラジン、および18員環内に事前組織化された孤立電子対をもつトリベンゾ[18]クラウン-6-エーテルを鍵構造として、それらの誘導体を合成し、分子間相互作用を巧みに操り集積構造を構築する。 ピラジノピラジンをベンゼン環の3か所に縮環させたパイ共役分子ドデカアザナフチレン誘導体DATNを、前駆体のピラジノジアミンとトリキノイルを酢酸存在下で縮合させることにより合成することを検討した。反応後の固形物をろ別し再結晶することによって、痕跡量のDATNを分取しX線構造解析によってその構造を明らかにすることができた。一方、反応系中には複雑な副生成物が混在しており、反応の追跡と生成物の精製法について引き続き検討する必要がある。一方、トリベンゾ[18]クラウン-6-エーテルのヘキサカルボン酸誘導体を、N,N-ジメチルホルムアミド、水、エタノール、塩酸を体積比2:0.5:0.3:0.05で混合した溶媒を用いて結晶化することによって初めて単結晶を得ることに成功した。単結晶X線構造解析により、この結晶は、内部に1次元チャネル状空隙を有する集積構造をもつことが明らかになった。さらに、この構造体はプロトン伝導性を示すことが明らかになった。
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