研究領域 | 高密度共役の科学:電子共役概念の変革と電子物性をつなぐ |
研究課題/領域番号 |
21H05486
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鈴木 修一 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (80433291)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 高密度共役 / 平面πラジカルイオン / 曲面πラジカルイオン / 静電相互作用 / スピン間相互作用 |
研究実績の概要 |
本研究では、π共役分子間空隙の極小化を具現化するプラットフォームとしてπイオン性開殻分子に着目し、それらが潜在的にもつレンジの広いエネルギースケール領域の分子間力(静電相互作用、不対電子間相互作用、ファンデルワールス力、など)の制御による高密度共役状態の実現と極限状態における機能開拓を目指している。具体的には、(1) 平面πイオン性開殻分子の集積構造制御、(2) 柔軟曲面拡張πイオン性開殻分子の創製、(3) 合成したπイオン性開殻分子の極限状態における機能、を調査・探求を行っている。 本年度、上述の (1)、(2)、(3) に関して以下に示す研究を遂行した。 (1) 平面πイオン性開殻分子の集積構造制御:ジヒドロフェナジンラジカルカチオン、フェノチアジンラジカルカチオン、テトラシアノキノジメタンラジカルアニオン、開殻ニッケルアニオン、開殻白金アニオンに関して、各種対イオンを有するイオン性開殻分子塩を合成し、それらの集積構造を結晶構造解析により解明した。いくつかの塩では固体-液体相転移により大きく集積構造が変化し、πイオン性開殻分子間の相互作用に由来する物性や機能が著しく変調することがわかった。 (2) 柔軟曲面拡張πイオン性開殻分子の創製:らせん状π共役系をもつラジカルカチオン塩の合成に成功した。対アニオンによりらせんπ骨格の構造が変調され、それらに付随して近赤外吸収特性の変化が見られた。 (3) 合成したπイオン性開殻分子の極限状態における機能:固液相転移を示すあるπイオン性開殻分子が液体状態にもかかわらず強い分子間相互作用を示すことを見出した。温度変調を行うことで液体状態でもイオン性分子の集積状態を変調可能であることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
空気中、200 度以上に加熱してもほとんど分解しないπイオン性開殻分子の創製法を確立しつつある。また、液体状態(融解塩)状態でも分解しないπイオン性開殻分子の合成にも成功し、それらが固液相転移により大きく機能性が変化することがわかってきた。πイオン性開殻分子の固液相転移に着目した研究は非常に限れており、さらに詳細な設計指針の解明や機能の研究により、高密度共役の実現への進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、極限状態でも安定なπイオン性開殻分子の創製を進め、それらの機能の解明およびそれらを用いた高密度共役の実現を検討する。具体的には、各種対イオンを導入した広いπ電子系をもつ平面・非平面イオン性開殻分子を合成し、それらの集積構造の解明と、極限状態での挙動を検討する。さらに、高密度共役の領域内の研究者との協働研究によりπイオン性開殻分子の機能を掘り下げ、高密度共役を実現すべく知見・機能の探索を継続的に行う。すでに、高圧下でのπイオン性開殻分子の集積構造の解明に関しては協働研究を開始しており、一定の成果を挙げつつある。
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