本研究では、力学や電場などの外部刺激によって電荷輸送特性が変化する平面π電子共役系液晶を構築することを目的とした。特に、ホウ素含有液晶性半導体エラストマーの開発を目指した。
光架橋性部位としてアルケンおよびアクリレート基を有する酸素原子架橋の平面固定化トリアリールボラン誘導体の合成法を確立した。π共役トリアリールボラン骨格の三方位にフェニル基を導入した化合物において、室温でカラムナー液晶相を発現させることに成功した。光ラジカル開始剤を添加した液晶試料に紫外線を照射し、部分的に架橋構造を形成させることで、伸縮性を示すエラストマーが得られることを見出した。自作の延伸機を用いて、液晶エラストマーを延伸した。ITO電極で挟んだ延伸試料に対して、飛行時間法によって電荷移動度の計測を行った。140%延伸したエラストマーにおいて、ホール移動度が2倍に上昇する新現象を見出した。新原理の力学・光センサーとして、人工皮膚などへの応用が期待される。
ヘテロ環オキサジアゾールとオリゴチオフェンの共役カラムナー液晶を開発し、近赤外光二光子励起による高輝度発光および光ダイオード特性を明らかにした。X線回折像の逆フーリエ変換によって電子密度マップを構築し、共役分子がオブリークカラムナー相においてダイマー構造を形成しながら積層構造を形成していることを明らかにした。さらに、液晶状態でポーリング処理することで、オキサジアゾールの分子内回転に由来した分極が起こり、光ダイオード特性が誘起される新現象を見出した。分極方向を反転させることで、電流の向きが反転した。結晶状態でも分極構造が長期間維持できることから、新たな光電変換素子への展開が期待できる。
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