研究領域 | マテリアルシンバイオシスための生命物理化学 |
研究課題/領域番号 |
21H05503
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 伸一 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (20633134)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
|
キーワード | アフィニティービーズ / 一重項酸素 / 近接標識 / ヒスチジン残基 / 標的同定 |
研究実績の概要 |
マテリアルと相互作用するタンパク質を親和性の強弱に関わらず同定できる手法を開発する。標識されたタンパク質を同定することで、弱い結合を介して、一過的にリガンドと相互作用するタンパク質を同定することを目指す。どのようなタンパク質が解析対象のリガンドと相互作用していたかを追跡することで、物質共生を達成し得るマテリアルがどのようなタンパク質によって認識されるのかを明らかにする。 我々はこれまでに、触媒分子の周辺数ナノメートルの空間で完結するタンパク質化学修飾法を開発しており、低親和性リガンドに対して結合するタンパク質を網羅的に解析するケミカルツールを開発してきた。本研究では、アフィニティービーズ上に構築する近接標識反応場を利用して、マテリアル(=リガンド)に相互作用するタンパク質を共有結合で化学標識する。アフィニティービーズ上で選択的に一重項酸素を産生できるシステムを構築し、ビーズに対する結合タンパク質を選択的に修飾できる手法を開発した。また、新たに見出した光増感剤によるタンパク質修飾のメカニズムについて詳細な解析を行った。 ヒスチジン残基の効率的修飾を可能にする触媒構造、修飾剤構造を選定し、手法を改良することに成功した。また、アフィニティービーズに光増感剤を導入する簡便な手法の開発に成功した。 領域内の共同研究により、物質共生を達成し得るマテリアル、免疫寛容を誘導するマテリアルに対して、光増感剤を結合させた分子を合成した。また、その分子が光増感剤結合後も機能性を保っていることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度では、一重項酸素を介したタンパク質のヒスチジン残基修飾法の改良を行った。アフィニティービーズ上で選択的に一重項酸素を産生できるシステムを構築し、ビーズに対する結合タンパク質を選択的に修飾できる手法を開発した。また、新たに見出した光増感剤によるタンパク質修飾のメカニズムについて詳細な解析を行った。その結果、従来の手法よりもヒスチジン残基を選択的に標識していることが示唆された。続いて、標識された後のタンパク質の濃縮法、質量分析による解析法の検討を進めた。さらに、領域内の共同研究により、物質共生を達成し得るマテリアル、免疫寛容を誘導するマテリアルに対して、光増感剤を結合させた分子を合成した。また、それらマテリアルに光増感剤を結合させた分子に関しても機能性を保っていることを明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度では、アフィニティービーズ上でのリガンド結合タンパク質の標識手法を論文化する。具体的には、複数種のタンパク質への結合が報告されているリガンドを用いて、その結合タンパク質を細胞破砕液中から同定する。従来法との比較によって、アフィニティービーズ上での触媒近接標識の有用性を実証する。また、領域内研究者が研究するマテリアルと相互作用するタンパク質を網羅的に化学修飾し、修飾タンパク質を濃縮、プロテオミクス専用の質量分析装置でタンパク質を同定する。物質共生を達成し得るマテリアル、免疫寛容を誘導するマテリアルに光増感剤を結合させた分子を2021年度に合成した。2022年度では、その分子を用いて、マテリアル表面でも一重項酸素を産生させ、マテリアルに結合するタンパク質の種類、結合部位を明らかにすることを目指す。得られる結果をもとに、さらなる手法の改良や、同定されるタンパク質にフォーカスした詳細解析の実験を進める予定である。
|