核酸医薬は様々な医療分野に応用される代表的な次世代治療技術の一つである。しかし次世代技術であるが故の予測困難な副作用への懸念があることから、多角的視点から副作用の可能性を精査し、その反応機構を解明しておく必要がある。本研究では核酸医薬に用いられる外来RNAやDNAが非特異的な免疫活性化を引き起こしてしまう原因を物質共生学の視点から解き明かし、核酸医薬における副作用予防に貢献することを目標とする。本研究では体内の異物を抗原提示するHLA Class IおよびISGsの発現誘導機構に着目し、その分子メカニズムの解明に迫る。本年度は、培養細胞に非自己dsRNAの導入をした場合、導入後24-96時間の間で、HLA Class Iの提示が高まることを見出した。その誘導レベルはX線の約2-4Gy照射時と同等であった。dsRNAの配列を変えた場合、HLA Class Iの提示のレベルや導入後の時間に変動はあったものの、いずれも20-50 nMの範囲でHLA Class Iの提示の上昇が認められた。核外核酸センサーであるRIG-I欠損細胞を樹立し、HLA Class I提示の解析を行ったが、RIG-I依存性は認められなかった。また、RNA-seqの結果からDNAセンサーであるcGAS発現は認められなかったことから、その他の核酸センサーがその認識に関わっている可能性が考えられた。さらに、dsRNA導入後にRNA-sequneceを行った結果、ISG(interferson stimulated gene)の発現上昇が認められたことから、これらのシグナル伝達がdsRNA導入後のHLA Class I提示の上昇に関わる可能性が示唆された。
|