研究領域 | マテリアルシンバイオシスための生命物理化学 |
研究課題/領域番号 |
21H05506
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
畠山 浩人 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (70504786)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 抗薬物抗体 / 免疫チェックポイント阻害剤 / アナフィラキシー |
研究実績の概要 |
(1)免疫チェックポイント阻害剤の糖鎖修飾様式の評価:免疫チェックポイント阻害剤投与後に引き起こされる抗薬物抗体産生について、投与する抗体のアイソタイプの違いが及ぼす影響を評価するため、複数の免疫チェックポイント阻害剤についてFcR-IIIAアフィニティーカラムを用い解析した。その結果、ADA産生が増悪する免疫チェックポイント阻害剤は、その他と比較して糖鎖修飾様式が異なることが示され、Fcγ受容体への親和性に影響する要因であることが示唆された。 (2)免疫チェックポイント阻害剤の分解過程の評価:抗薬物抗体の産生は、最初に免疫チェックポイント阻害剤が分解され抗原提示されるところから始まる。そこで異なる2種の放射性同位体を標識しマウスへ投与することで、in vivo臓器における分解を評価した。その結果、ADA産生の増悪には関係なく、標的依存的であり、ADA産生の増悪に分解量自体は大きく影響しないことが示唆された。 (3)ADA産生が増悪に影響するがん病態による変化:ADA産生は担癌モデルの種類により大きく異なることが示されていた。健常マウスおよび5種類の担癌マウスを用い、ADA産生と相関する要因を解析した。その結果、免疫細胞の中で骨髄系細胞の増加が顕著に相関していた。また、B細胞の中でB2200の発現が弱陽性に変化した細胞が多く存在することが示された。 (4)組織透明化による免疫チェックポイント阻害剤の3次元分布評価:投与した免疫チェックポイント阻害剤が脾臓内でどのように分布するか明らかとするため、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の麓伸太郎准教授との領域内共同研究として組織透明化と3次元空間での抗体分布についての検討を開始した。本年度は、CUBIC試薬を用いた組織透明化および免疫染色の条件検討を行い、脾臓のB細胞や胚中心を検出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に記載している事項については概ね評価が完了しており、また領域内共同研究も開始できている。これまでの検討で、ADA産生至る過程の中で、分解は大きく影響はしておらず、ADA産生増悪にはFcγレセプターへの結合性が高いことが要因であることが示唆され、今後の研究の方向性が明確となった。また、ADA産生が亢進する担癌モデルにおいては脾臓などの免疫細胞の増加が要因となっていることも明らかとすることができた。以上より、本課題は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ADA産生が亢進する担癌モデルにおいては脾臓などの免疫細胞の増加が要因となっていることが示された。また免疫チェックポイント阻害剤のうちFcγ受容体への結合親和性が高い、かつPD-L1を標的とした10F.9G2でADA亢進が増悪しているため、増加した免疫細胞の中で、PD-L1の発現が亢進している細胞、またFcγ受容体が発現している細胞をフローサイトメーターなどで解析する。これらの細胞と投与した10F.9G2が脾臓の胚中心などで相互作用しているか、組織透明化した脾臓組織を3次元的に解析することで評価する。10F.9G2と相互作用する細胞について、depletion抗体で除去することでADA産生が減弱するか検証し、ADA産生の亢進に寄与するか評価する。また10F.9G2が相互作用する細胞については、A01班などと連携してより詳細な相互作用を解析するとともに、ADA産生が亢進しない他の免疫チェックポイント阻害剤について、これらの相互作用が減弱する仕組みについても解析を進めることで、ヒトと共生するために回避すべき強い相互作用や弱い相互作用について検討を進める。
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