公募研究
昨年度までに、アデノシンA2A受容体(A2AAR)のリガンド結合部位に位置するA165, A265のメチル基に由来するNMRシグナルを観測・帰属した上で、A265の1H化学シフトが、E169-H264の塩橋の構造を反映することを示した。今年度は、滞在時間が野生型の1/10程度まで低下することが報告されているT256A変異を導入したA2AARにおける、アラニン残基およびメチオニン残基のメチル基のNMRシグナルを、滞在時間が比較的長いZM241385が結合した状態で観測した。その結果、A265に由来するシグナルの1H化学シフトが、滞在時間が1/60程度に減少するE169Q変異体と野生型の中間的な値となり、滞在時間と相関することが判明した。また、滞在時間がZM241385の1/8程度であることが知られている、LUF5834が結合した状態においても、A265の1H化学シフトがE169Q変異体と野生型の中間的な値となり、滞在時間との相関がみられた。T256A変異体におけるA265の化学シフトが、野生型とE169Q変異体の中間的な値となる現象は、完全作動薬NECAが結合した状態においても、またA265に近接するM270に由来するNMRシグナルにおいても観測されたことから、A2AARの活性化状態にかかわらずA265の化学シフトが滞在時間と相関すること、これらの化学シフトが構造変化を反映することが示唆された。以上の結果から、T256A変異導入時やLUF5834結合時には、E169Q-H264の塩橋が部分的に崩れた構造となることで、中間的な滞在時間を示すと考えた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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