カルシウムイオンに応答する受容体として、Gタンパク質共役型受容体の1種であるカルシウム感知受容体(CaSR)が同定されている。CaSRは、生体内に幅広く発現し免疫応答に関与することが、明らかとなってきている。そこで本研究では、磁場によるCaSR活性化を介し免疫系制御が可能な磁性ツールを開発することを目的とする。本年度は、カルシウムに結合するポリマーの設計と合成に取り掛かった。前年度の結果から、ポリカルボン酸のカルシウムに対する親和性を向上させると、生理条件下におけるカルシウムの放出制御が困難となることが判明した。そこで、外部刺激に応答するドメインとカルシウム結合に寄与するドメインを隔てたポリマーを合成した。ポリマーの構造や粒子径は、透過型電子顕微鏡、フーリエ変換赤外分光法、動的光散乱を用いて評価・同定した。ポリマーのカルシウムに対する親和性は、ポリマー懸濁液を透析しポリマーを含まない画分のカルシウム濃度を測定することで評価した。この際、カルシウムに対して異なる親和性を有する各種蛍光プローブを適宜選択・使用することで、カルシウム濃度を定量した。その結果、ポリマーが外部刺激に応じて可逆的にカルシウムを放出および吸着することが明らかとなった。さらに、前年度に合成が完了した磁性ナノ粒子と、今回新たに合成したポリマーを共存させ、光ファイバー測定によりカルシウム濃度定量を行ったところ、磁場照射時に水溶液中のカルシウム濃度が増大することが示唆された。
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