研究領域 | マテリアルシンバイオシスための生命物理化学 |
研究課題/領域番号 |
21H05521
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
和久 友則 京都工芸繊維大学, 分子化学系, 准教授 (30548699)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | ペプチド / ナノファイバー / 自己組織化 / 血中滞留性 |
研究実績の概要 |
がん組織への抗がん剤デリバリーシステムの構築が求められている。キャリアに用いる材料には、共生と機能発現が求められる。一次元ナノ材料が免疫系による認識を回避する『共生型』材料として有望視されているにも関わらず、『長さ』と『生体-材料間相互作用』との相関関係に関する情報が少なく、『共生材料』設計に関する指針は乏しい。その原因は、『長さ』の異なる一次元ナノ材料を精密に作り分ける手法がなかったためである。そこで本研究では、ペプチドナノファイバー (NFs) の線維長をナノメートルオーダーで精密に制御するための新規独自技術を新たに開発する。これまでに、αA-クリスタリン由来のβシート形成ペプチド (FVIFLD) が形成するNFsに関する研究に取り組んできた。βシートペプチドナノファイバーは核形成過程と生長過程を経て形成する。核形成過程が律速段階であり、ひとたび核が形成すると線維伸長が開始するため、線維長分布の広いNFsが得られる。興味深いことに、NFs断片 (シード) を、自発的な核形成が起こらない濃度のモノマーペプチド溶液に添加した場合には、核形成過程を経ることなくシードから伸長し、比較的線維長分布の狭いNFsが得られることが知られている。以上の知見をもとに、本研究では、線維形成能をもつペプチドの会合性を制御することによる新たな線維長制御技術の開発を試みる。具体的には、線維形成能をもつペプチドモノマーに、イミン結合を介して線維化阻害部位を導入したプレモノマーを用いる手法である。プレモノマー中のイミン結合の分解を制御することにより、自発的な核形成を起こさない領域にモノマー濃度を維持しつつペプチドを線維化することができれば、単分散なナノファイバーを作製できると考えた。今年度は、種々の線維形成配列と線維化阻害部位の組み合わせを検討することにより、プレモノマーの分子設計の最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
線維長制御技術の要となるプレモノマーの分子設計を最適化することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後、プレモノマー中のイミン結合の分解によるモノマーの生成挙動およびプレモノマー溶液からのナノファイバーの形成について評価する。
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