メダカT1r2a/T1r3リガンド結合ドメインに対する新たなリガンドとして、塩化物イオンを見出し、示差走査蛍光測定による解析から、解離定数が約110 uMという弱い相互作用を示すことを明らかにした。さらに、変異体解析も含めたFRET解析から、この塩化物イオンの結合が、受容体応答を引き起こすアミノ酸と同様にリガンド結合ドメインの構造変化を引き起こすこと、共同研究から、塩化物イオンが種を問わずT1r3に作用し、実際にT1rを介して味覚を引き起こす生理作用を示すことを明らかにした。 また、メダカT1r2a/T1r3リガンド結合ドメインを用いたリガンド探索から、これまでに解析を行なってきたタンパク質構成性アミノ酸以外のアミノ酸も、同ドメインに対し結合を示すことを明らかにした。一方、受容体応答を誘起するアミノ酸については、T1r2a/T1r3リガンド結合ドメインに結合し同ドメインの構造変化を誘起することをこれまでに明らかにしていたが、FRET解析の結果、受容体応答を誘起しない非応答性アミノ酸についても、同ドメインに結合し、応答性アミノ酸と同様の構造変化を誘起するものがあることを見出した。 T1r3ノックアウト変異メダカを用いた表現型解析について、予備的解析では摂食行動や排卵行動について野生型メダカとの差異が見られたものの、個体数を増やした本解析を実施した結果、このいずれも変異メダカと野生型メダカの間に統計学的に有意な差異は見られないことが明らかになった。
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