公募研究
本研究は、非タンパク質性物質に対する免疫応答に関して、現在盛んに研究されている核酸及び人工高分子を安全に使用するための基礎的知見を得ることを目的とする。核酸やポリエチレングリコール(PEG)は、その高い生体適合性から遊離型では抗体を誘導しないが、リポソームに搭載・修飾されナノ粒子化すると抗体が誘導されるようになることを以前に研究代表者は明らかにしている。抗核酸抗体や抗PEG抗体が誘導されると、核酸医薬品やPEG修飾医薬品の投与時に薬効の低下やアナフィラキシー反応の発現に繋がり得る可能性がある。そこで、本研究においてこれらの物質が免疫反応を回避するために必要な物理化学的性質を探索し、これからの安全な薬剤創出のための知見を得る。当該年度は、健常マウスから回収した脾臓細胞に核酸搭載PEG修飾ナノ粒子をin vitroで暴露させた際の抗体誘導を評価した。物理化学的性質(濃度・粒子径・PEG修飾割合・核酸搭載割合) または搭載する核酸(pDNA、siRNA、アンチセンス核酸)を変化させた核酸搭載リポソームを脾臓細胞に添加して培養し、培養上清中に分泌された抗核酸抗体をELISAにて測定した。検討の結果、核酸の濃度、PEG修飾割合、核酸搭載割合、核酸の種類に依存して抗核酸抗体誘導量が変化することを明らかにした。また誘導された抗核酸抗体は各種核酸と交差反応性を示すことが示唆された。in vitro条件下において免疫系を刺激しない核酸搭載PEG修飾ナノ粒子に関する物理化学的性質に関する情報が得られた。
2: おおむね順調に進展している
成熟B細胞を含む脾臓細胞を用いて、抗核酸抗体を誘導しにくい核酸搭載PEG修飾ナノ粒子の物理化学的性質に関する知見をin vitro条件下において得ることができた。核酸の種類によっては抗核酸抗体が誘導されにくかったため、核酸自体の修飾も抗核酸抗体誘導に影響を与えることが示唆された。当初予定していた本年度の検討は終了しており、おおむね順調に進展しているといえる。
今後は、本検討で得られた知見がin vivoでも同様に確認されるのかを確認する。健常マウスに物理化学的性質を変化させた核酸搭載PEG修飾リポソームを投与し、血清中の抗核酸抗体の変化を検討する。また、今回用いた核酸搭載PEG修飾リポソームの他に、現在新型コロナワクチンで注目を集めている核酸封入型のPEG修飾ナノ粒子における抗核酸抗体の誘導や抗PEG抗体誘導も評価する。本検討を通して得られた知見を基に、現在盛んに臨床応用されている核酸、人工高分子を安全に使用するため戦略を設計する。
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