公募研究
本研究では、非ウイルスベクターによる遺伝子発現を長期化し、非ウイルスベクターが生体内で共生できることを目指した。2021年度までに、カチオン性リポソーム・プラスミドDNA複合体(リポプレックス)を用いた遺伝子導入において、物質共生補助剤としてフラボノイド(ケルセチンなど)により遺伝子発現を高められることを見出した。また、リポプレックス調製時のリポソームのブラウン運動パラメータ(リポソームの粒子径および調製時温度より規定される拡散係数)が遺伝子発現および細胞生存率を決定づけることも明らかにした。今年度は拡散係数が遺伝子発現と相関することについてメカニズム解析を行った。まず、リポソームの拡散係数はリポプレックス中のプラスミドDNAの外界への露出を示すアクセス性と負の相関を示した。さらにプラスミドDNAのアクセス性は遺伝子発現と正の相関を示した。すなわち、粒子径が小さく調製時の温度が高いほど、プラスミドDNAアクセス性の低いタイトな粒子が形成され、細胞内でリポプレックスからプラスミドDNAが解離しにくく、遺伝子発現が低くなることが明らかになった。さらに、リポソームの拡散係数は酸化ストレスレベルにリポプレックス粒子数を乗じた値と正の相関を示し、酸化ストレスレベルにリポプレックス粒子数を乗じた値は遺伝子発現と負の相関を示した。これは、脂質やプラスミドDNAの量は一定であり、粒子径が大きい方がより粒子数が少なくROSの影響がでにくくて高い遺伝子発現を示す一方で、調製時温度が高い方がよりROSが出やすく、遺伝子発現が低くなるものと考察した。本研究では、新たに酸化ストレス中庸仮説、すなわち適度な酸化ストレスにより適度にオートファジーを活性化することで遺伝子発現に有利に働くとの仮説を立てており、物質共生補助剤の濃度に適正な濃度範囲が存在することを明らかにした。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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International Journal of Pharmaceutics
巻: 637 ページ: 122881~122881
10.1016/j.ijpharm.2023.122881
Pharmaceutics
巻: 14 ページ: 1203~1203
10.3390/pharmaceutics14061203
http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/lab/dds/index.html