一般に相互作用の無いとされる双性イオン間の弱い相互作用について調べることを本研究の目的とする。特に、双性イオンの構造や、溶液の条件によって相互作用が変化するという点に着目する。このように、相互作用しないと考えられているベタインポリマーでも、条件に応じて相互作用を示す場合がある。合成した双性イオン高分子と、細胞膜最表面にある、ホスホリルコリン基の相互作用を制御することで、細胞内への高分子の取り込み促進や抑制を調節できるようになると期待される。 生体適合性高分子として知られるポリ(2-メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン)(PMPC)の側鎖と、逆の電荷配置のコリンホスフェート基を側鎖結合したコリンホスフェートポリマー(PMCP)を制御ラジカル重合法で合成した。得られたPMCPの分子量分布は、せまかったので、重合はリビング的に進行したと考えられる。得られたPMCPは、純水中で分子間会合していた。この水溶液に食塩を添加すると、粒径が減少したので、会合のドライビングフォースは静電相互作用であることが示唆された。 PMPCのモデルとして、側鎖にリン酸基と4級アンモニウム塩ランダムに含むポリアンホライトの合成を試みた。PMPCのようなベタイン構造の高分子は、一つの側鎖にカチオンとアニオンの両方を含むが、一つの高分子鎖中にカチオンとアニオンをランダムに共重合体したポリアンホライトの場合、電荷の割合などを簡単に変更できるという利点がある。しかし、共重合を行うとゲル化して、水に不溶となった。この原因はリン酸基を含むモノマー中に、ビニル基を2つ含む不純物が含まれているためと考えられる。今後、リン酸基を保護したモノマーを合成し、共重合を行ってから脱保護することで、目的のポリアンホライトを合成できると考えられる。
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