公募研究
水素などの軽元素は機能性材料において重要な役割を果たす。本研究では、本変革領域の研究対象である「ドーパント誘起超秩序構造」での軽元素挙動を観測し、その役割の解明を目指す。そのため、軽元素に高い感度をもつ中性子ホログラフィーで、これまでの課題であった高分解能化を行う。すなわち、準備済みの高分解能検出器を用いて多検出器計測系を構築し、高検出効率での9倍の高分解能を実現する。これにより観測可能なドーパントを大幅に拡大し、室温強磁性半導体CoドープTiO2でのCo近傍のO挙動やFeCo合金の超秩序構造などを観測する。本研究は世界的にも申請者のみが実現可能であり、本変革研究の柱である蛍光X線ホログラフィーでは困難な領域を担うことで超秩序構造科学を加速できるうえ、本変革領域が目指す「世界拠点形成」と「日本のプレゼンス向上」に貢献できる。2021年度には申請書の計画項目1に示した多検出器系構築のため、高分解能のCeBr3シンチレーション検出器を購入した。この結果、すでにもつ検出系と合わせ6本の検出系を構築することができた。かつ、ガンマ線遮蔽もシミュレーションを用いて合理的に最適化し、ノイズの低減に成功した。この試験機を作成し性能評価したところ、たしかに信頼性が向上することが確認できた。2022年度には実機を作成し、これまで困難であった測定に取り組む。2021年度には申請書での計画項目3のFe0.08Co0.92合金での中性子ホログラフィーを行った。またその比較物質として、BドープFe0.08Co0.92合金の測定もおこなった。その結果、多検出器系を用いればCo周りの原子像を可視化でき、本計画でのFeCo合金研究が現実的であることを示すことができた。
2: おおむね順調に進展している
2021年度には計画どおり、高分解能検出器での多検出器系を構築することに成功し、実際に性能が向上することを確認した。これにより、本研究がめざす挑戦的な実験が可能であることがわかった。さらに早期に多検出器系の目処がたったため、申請書での計画項目3のFeCo合金での実験観も行うことができ、FeCo合金での研究に着手できた。また、一連の成果を学会などで発表した結果、ユーザーが増え始めており、本研究の波及効果の一つといえる。これらのことから、おおむね順調に進展していると評価した。
2021年度に多検出器系の試験機を構築し、期待通りの性能がでることが確認できたので、2022年度に実機を構築する。かつ、別予算で導入する中性子ホログラフィー用の冷凍機を組み合わせることで、世界的にも例のない、軽元素局所構造の温度依存性が研究対象となる。また、2022年度は申請書の計画項目2のTiO2薄膜など薄膜材料の実験も開始する。これは中性子としては挑戦的な実験で、成功すれば世界初となるインパクトの大きい実験である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (4件)
Appl. Phys. Lett.
巻: 120 ページ: 132101(1)-(6)
10.1063/5.0080895