本研究では、研究代表者らが開発した2種の金属ホスホネートMOF類縁化合物を母体化合物とし、構造欠陥の解明や物性制御方法の確立を目的とした。 前年度にオキシ水酸化ガリウムを添加して得られた針状AlMepO-β単結晶はGaを含んでおり、XAFSより骨格置換の可能性が考えられた。X線ホログラフィーの予備測定を実施したものの、意味のあるホログラムパターンを得ることはできなかったので、高分解能粉末XRDデータを用い、Rietveld法による構造精密化を試みた。得られた構造では、3つのAl/P四員環の交点にあたっていて歪みが大きいと考えられるAl4サイトが最もGa置換されやすいことがわかった。 MBP-1における金属種のイオン半径及び価数の違いに着目し、2種の金属種を用いて得られるMBP-1における固溶挙動を構造・組成の観点から調査した。2価金属種同士の組み合わせであるCd-MnBP-1では、全ての組成範囲で単一相が得られたが、Cdは生成物中にほぼ仕込み組成通りに導入されており、Cd含有量の増加に伴った格子定数の増大が見られたことから、全組成範囲で固溶体が形成されていると考えられる。一方、価数の異なる金属種同士の組み合わせであるV-MnBP-1では、V含有量の増加に伴い格子定数が直線的に変化する相(phase 1)に加え、高V含有量領域ではVBP-1と同様の格子定数をとる相(phase 2)も見出された。これは、phase 1ではMnBP-1にVBP-1が固溶しており、phase 2はほぼMn種を含まないVBP-1と考えられ、V含有量の増加に伴い、phase 1のM/BTP比が金属サイト欠損の存在を示す2以下から徐々に3程度まで上昇することから、配位子欠損を伴って固溶相が形成され、約55%と見積もられる固溶限界を超えるとVBP-1相が出現するものと考えられる。
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