研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
21H05563
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
燒山 佑美 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60636819)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 分子性結晶 / ホストゲスト相互作用 / 刺激応答性 / 結晶-結晶構造変化 / その場観察 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、X字型分子4-ピリジルインダンジオン二量体を用いて、既に構築に成功している2種類の超秩序構造、すなわち①一次元チャネル内におけるダイナミックな空隙に着目したゲスト分子ダイナミクスとホスト構造変化の相間解明、②加熱によるゲストの脱離に伴う結晶/アモルファス境界の精密評価に基づく結晶構造変化メカニズムの解明に向けた検討を行った。 ①については、ゲスト分子の導入とそれに伴うホスト骨格の応答を可視化することを目的に、放射光粉末X線および放射光顕微IRを利用したその場ガス導入実験の実施を計画した。これらについては、2022年度前期でのSPring-8でのビームタイムを無事確保することができた。さらに顕微IRによるその場ガス導入実験用小型セルを独自に設計・開発した。 ②では、A02班千葉グループとの領域内共同研究により、ゲスト脱離温度前後での時分解SAXS・WAXS測定を行った。具体的な様相の可視化には至っていないものの、ゲスト脱離に伴う結晶構造変化プロセスにおいて、X字型分子が分子平均位置を保ちながら動いていっていることが分かった。 以上に加え、発光機能を有するピレン骨格をあらかじめ導入した2種類の新規X字型分子の合成・包接結晶化ならびにその発光特性を明らかにするとともに、これらが180℃前後で可逆な構造相転移を示すことを見いだした。また、既存の分子系においても新たにゲスト交換反応を介した結晶-結晶構造変換を明らかにすることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射光を用いた実験申請は本研究課題採択時には既に締め切られていたため、実際の実験は2022年度開始となる。これを踏まえて考えた場合、その準備及び予備的知見の獲得が着実に進んでいる。加えて、新規分子の合成・物性解明や新たな柔軟な結晶-結晶構造変換プロセスを見つけることができたことから上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度はX字型分子4-ピリジルインダンジオン二量体を基盤としたゲスト吸脱着に伴う「結晶/アモルファス」境界についての構造詳細を、温度可変X線全散乱(SPring-8)・中性子散乱および逆モンテカルロ法を用いたシミュレーションにより明らかにする。また、放射光と自作のセルを用いてのその場顕微IR実験(SPring-8)により、「ダイナミックな空隙」内部へのゲストの導入のエリアマッピングを行い、通常の粉末バルクサンプルでは得られないゲスト導入プロセスの可視化に挑戦する。さらに、類縁体4ーピリミジルインダンジオン二量体において、前年度新たに発見した結晶-結晶構造転移プロセスを放射光その場粉末X線回折法(SPring-8)により追跡する。以上の実験により既に構築に成功している2種類の超秩序構造の精密解析に挑む。 以上に加え、前年度から引き続き検討しているピレン骨格導入体の溶液・固体状態における光物性及び加熱/冷却により生じる可逆的な相転移現象を、各種スペクトル測定並びに高温単結晶X線回折実験(高エネ研)により明らかにする。また、一次元チャネルを有する既存のインダンジオン二量体結晶に双極子を有する鎖状分子を導入、外部電場を加えることによる誘電応答性の制御や、ホスト骨格へのアントラセン部位導入による光照射2+2反応を利用した刺激応答性誘電性結晶の開発を行う。
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