電界効果トランジスタでは一般的に非晶質酸化物がゲート絶縁膜として用いられ,ダイヤモンドでは特に原子層堆積法によって成膜した酸化アルミニウム薄膜が応用されてきた。本研究では酸化アルミニウム薄膜成膜時の原料を従来のトリメチルアルミニウム(TMA)からジメチルアルミニウムハイドライド(DMAH)に変更して複数のキャパシタ素子を作製し,平均界面欠陥密度を評価した.界面欠陥密度は、TMAでは9.06×10^12 /eVcm ,DMAHでは7.62×10^11 /eVcmとなり,DMAHを用いた場合に大幅な界面欠陥密度の減少を達成した. この界面欠陥の起源を解明するため,1~2 nmの酸化アルミニウム絶縁膜をダイヤモンド基板上に成膜し,絶縁膜の上からダイヤモンドとの界面の光電子ホログラフィを測定することに成功した.この測定から,ダイヤモンドのバルク由来の光電子ホログラフィと区別して界面由来の情報を抽出したところ,水素終端された界面にC-HだけでなくC-O結合が存在しており、C-O-Al-O-Cのブリッジ構造を形成していることが明らかになった.欠陥密度の異なる2種類の試料に対して同様の測定と分析を行い、C-Oの結合量と界面欠陥密度に相関があることが解った。従って、C-Oに起因する結合がダイヤモンドデバイスの界面欠陥起源の一つであることが示唆された。 この結果は、ダイヤモンド素子の欠陥密度制御や欠陥低減手法の提案に繋がる重要な知見である。
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