研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
21H05569
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
細川 伸也 熊本大学, 産業ナノマテリアル研究所, 特任教授 (30183601)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 機能性ゼオライト / 放射光 / 部分構造 / 電子状態 / ダイナミクス |
研究実績の概要 |
本学術変革領域において、重要な機能性を発現する材料として注目されているゼオライトを対象として、その原子配列、電子構造およびダイナミクスの基礎物性の観測を行う。本年度は主として、抗菌性を持つ銀含有ゼオライトを対象として、まずX線異常散乱実験を行い、銀のまわりに限定した原子配列の情報を得た。また、絶縁体であるゼオライトから電子構造の情報を得るために、酸素1s-2p共鳴効果を利用した軟X線発光分光測定を行い、酸素2p部分電子密度のデータを得た。これらの実験結果を検証するために、密度汎関数理論を用いた計算を行い、得られる原子構造と電子状態と比較を行っている。特に複雑なゼオライトの探索に理論的なサポートは重要である。この結果より、ゼオライト中の銀原子の位置を正確に求めるとともに、銀を含有することでどういう電子状態が抗菌性を生むのかを、助成期間中に明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の実施期間は半年と非常に短かったが、本課題の採択される前に、放射光施設へ利用課題を申請、採択されていたので、X線異常散乱、軟X線発光分光ともに期間中に実験を行うことができ、科学的に妥当な結果を得ている。また申請時には計画していなかった理論計算を行うために、科研研究員を2月より雇用して、密度汎関数理論による理論計算を行った。実験と理論の結果の整合性は極めて良いので。それらの結果をまとめた論文を論文を早急に投稿する予定である。また、重金属を含まない通常のゼオライトの一つについて、発光分光実験と密度汎関数理論計算を組み合わせた論文を既にまとめて投稿している。
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今後の研究の推進方策 |
まず、銀含有ゼオライト中の銀原子の位置を正確に求めるとともに、銀を含有することでどういう電子状態が抗菌性を生むのかを、助成期間中に明らかにする。続いて排ガス無害化の長寿命触媒として用いられている鉄、銅などの遷移金属を含むゼオライトを対象として、1)X線異常散乱を用いた遷移金属のまわりの原子配列を選択的に明らかにする。2)発光分光法によるO 2p部分状態密度を求めるとともに遷移金属の3d部分状態密度を求める。3)密度汎関数法によって、実験と整合性のある原子構造、電子状態を求め、ゼオライトの持つ優れた機能の根因を明白にする。また新たにダイナミクスの観点から、元素選択性を持つ核共鳴X線非弾性散乱実験を用いて、ゼオライトに含まれる鉄原子、あるいは優れた二酸化炭素吸着能力を持つスズ含有ゼオライトのスズ原子の振動状態密度を明らかにし、それぞれの機能に中心的な役割を示す元素の、特徴的な動的情報を得るために、大型放射光施設に課題申請を行った。
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