研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
21H05572
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
中嶋 誠二 兵庫県立大学, 工学研究科, 准教授 (80552702)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 強誘電体 / 半導体物性 / 超膣j構造 / ドーパント |
研究実績の概要 |
2021年度は電場印加下における単結晶MnドープBFO薄膜の局所原子構造解明に取り組んだ。膜厚1μmのMn 1 at%ドープBFO薄膜上に電極幅20μmのPt電極パターンを形成した。このPt電極間に150Vの電圧を印加し、電場印加下の領域に放射光を照射した。その際発生する蛍光X線ホログラムを記録し、これを用いて電場印加下の局所原子構造の観察を試みた。入射X線は9-11keVを500eVステップで照射し、5枚のホログラムを得た。なお、本測定はSPring-8 BL13XUビームラインにて実施した。印加電圧0Vおよび150Vで測定したFe Kα線ホログラムより得た原子像から、電場印加により明らかに原子像が変化していることが確認できた。これらの結果は電場印加下のTMO5超秩序構造の機能性理解に有用な知見であり、今後はこれらの結果をさらに解析し、妥当性の検証を実施する。今回の実験により、入射X線は集光することが望ましい点と24時間という長時間の電場印加によりデバイスが絶縁破壊するという問題点が見出され、今後計画班メンバーと協議しつつ進めていく。 また、ノーマルモードXFHにおいて同様に実施した電場印加下のXFH測定結果を解析したところ、FeKα線ホログラムにおいてコッセル線の変化を見出した。これによれば、電場印加した[110]方向には格子が伸びており、[-110]方向には変化がないことが確認できた。これは逆圧電効果による電場誘起格子歪であると考えられる。 今後はドーパント原子からの気光X線ホログラムを得ることをめざし、電場印加下におけるドーパント近傍の局所構造に関する情報を得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は電場印加下の蛍光X線ホログラム測定というチャレンジングな取り組みを行い、電場印加の有無により、ホログラムパターンが変化していることを見出した。しかし、原子像を得るには至っておらず、次年度に、測定素子構造、測定手手法を改善して測定する。 以上のように、電場印加下の蛍光X線ホログラム取得と、次年度に向けた課題が見いだせており、概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は引き続き、MnドープBiFeO3薄膜の電場印加下の蛍光X線ホログラフィ測定に取り組む。昨年度の結果から、電場印加領域が20μmと狭い点、約24時間の電場印加によりデバイスが絶縁破壊してしまう点が問題点として見出された。今年度は前期にマイクロビームを用いた蛍光X線ホログラフィ測定を実施する。これにより電場印加部からの情報のみを確実に取得する。このためのビームアイムはSPring-8にて既に採択されており、準備が整っている。さらにデバイスの絶縁破壊対策としては低温測定の可能性を検討する。こちらは、計画班のメンバーと協議しつつ進める予定である。 さらに、TMO5超秩序構造を明らかにするために、Mn、VドープBiFeO3薄膜を作製し。ドーパント近傍の局所原子構造を比較する。この実験は高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリーでの実施を計画班メンバーと連携して進める予定である。
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