研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
21H05573
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
中嶋 敦 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30217715)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 合金担持触媒 / 構造活性評価 / 秩序構造 / 合金ナノクラスター / 電子物性評価 / 広域X線吸収微細構造解析法 |
研究実績の概要 |
優れた活性と充分な耐久性を有する触媒の創製は、化学変換過程やエネルギー変換過程の一層の効率化として、エネルギーや環境の問題を克服するために極めて重要である。不均一触媒として広く実用化されている担持触媒では、構造活性相関の観点から評価、解明のためには、秩序構造の視点が極めて不十分であった。本研究では、金属ナノクラスターの構成原子数と組成を精密に制御することによって、担体表面上に均一担持して秩序化させた担持触媒の活用とその構造評価を行うことを研究目的とした。研究項目として、合金ナノクラスターの生成とサイズ選別した有機基板への担持と電子物性評価、および、嫌気下での広域X線吸収微細構造解析法(EXAFS法)の構築について進めた。 合金クラスターの生成には、パルスマグネトロンスパッタリング法によるナノクラスター生成法を用い、四重極質量分析器で特定の原子数、組成の合金ナノクラスターを電極基板上に非破壊で蒸着させた。電極基板には、グラファイト基板に予めフラーレンやコロネンなどの有機分子を加熱蒸着した秩序性に優れる有機基板を用いた。X線光電子分光評価によって、合金ナノクラスターの担持基板の評価を行った。遷移金属合金、アルミニウムとホウ素、ケイ素と遷移金属、の混合系に対して評価を行ったところ、ナノクラスターのサイズ、組成とともに、有機基板の電子受容性と電子供与性によって、担持状態の電荷状態が変化し、酸素気体との反応性が大きく変わることを見出した。 また、嫌気下でのEXAFS法の構築として、秩序化させた担持触媒の活用とその構造評価のために、合金ナノクラスターの担持構造を精密に評価できる手法の構築を進めた。担持ナノクラスターを対象に、ナノクラスター、有機基板の秩序性を最大限に維持するために、嫌気搬送された担持試料のEXAFS法の構築をA01班、A02班と連携して進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、パルスマグネトロンスパッタリング法による高強度ナノクラスターイオン源を用いて合金ナノクラスターを触媒単位として生成させ、特定の原子数と組成をもつ合金ナノクラスターの非破壊選択的な基板蒸着によって、秩序性をもった不均一触媒として電極触媒を創製できている。まずはじめに、アルミニウムとホウ素の混合系に対して評価を行ったところ、ナノクラスターのサイズ、組成とともに、有機基板の電子受容性と電子供与性によって、担持状態の電荷状態が変化し、酸素気体との反応性が大きく変わることを見出している。具体的には、この気相法により、清浄なアルミニウム13量体超原子を大量合成して、担体としてC60などの有機分子で修飾した秩序性の高い有機基板を用いることによって、アルミニウム13量体超原子を秩序的に基板固定できた。アルミニウム原子の集合したナノ構造体は、極めて酸化されやすい化学種であるが、13原子を集合させて金属原子集合体の秩序化膜を作成させることによって、その酸化反応性を2桁程度低減できることを見出した。これらの結果は、アルミニウム超原子による機能ナノ構造体基板の開発として利用価値が高いと考えられ、次世代の化学変換、エネルギー変換を実現するナノ構造体の機能創成につながることが期待される。 また、この秩序化膜の成果について、領域内の理論班と共同研究を進めるとともに、嫌気搬送された担持試料のEXAFS法の構築をA01班、A02班と連携して進めており、これらの研究の状況は、おおむね順調な進展であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに構築した高強度ナノクラスターイオン源を用いて合金ナノクラスターを触媒単位として生成させ、特定の原子数と組成をもつ合金ナノクラスターの非破壊選択的な基板蒸着によって、秩序性をもった不均一触媒として電極触媒を創製する。電解セルにおける合金ナノクラスター電極触媒の活性評価を行うとともに、パルスマグネトロンスパッタリング法や広域X線吸収微細構造解析(EXAFS法)などによる構造と電子物性の評価を第一原理計算と併せて進めて、原子数、組成を単一にした秩序化担持触媒として、その触媒活性と構造相関が新しい不均一触媒の科学を明らかにする。 当該の学術変革の研究領域への貢献としては、高度な量子ビーム技術である EXAFS法での連携はもちろんのこと、本HiPIMS手法による担持触媒を領域内で共有して触媒開発の指針の創出を図るとともに、大規模第一原理計算を行いやすい素姓の良い試料の実験成果の提供と、X線光電子分光評価(XPS法)などによる材料機械学習に資する記述子の探索を進めて、超秩序構造ならではの物性科学の領域研究に貢献する。
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