本研究課題の目的は、散乱・揺らぎ場の高精度な補正を目指し、新たに提案した誤差拡散揺らぎ補正法(ハーフトーン処理を光波面制御に応用する手法)の原理実証を行うとともに、さまざまな応用展開を目指した研究開発を推進することである。 2022年度の実施項目は以下の通りである。2021年度に試作した、系外惑星探査を目指したコロナグラフ光デバイス(12分割位相マスク)に対して、室内シミュレータにおいて誤差拡散揺らぎ補正を導入したダークホール制御試験を行った。ダークホール制御とは、コロナグラフで除去できない恒星残留スペックル光(観測装置内の光学収差等に起因)を、光波面揺らぎ制御によりさらに除去する技術である。室内試験の結果、恒星モデル光のスペックル強度レベルを、広い領域にわたり1.5E-6(制御前)から 2.2E-7(制御後)に低減した。今後は、性能を制限する要因について調査することで、恒星モデル光強度レベルのさらなる低減を目指していきたい。 誤差拡散揺らぎ補正法の他の応用展開として、渦コロナグラフを利用した汎用波面センサーの開発を推進した。これは、コロナグラフの原理により平面波成分を除去することで、光波の揺らぎ成分のみを高感度に測定することを目指した手法である。本手法に誤差拡散揺らぎ補正法を導入できれば、揺らぎ計測感度をさらに向上できると期待している。2022年度は、渦コロナグラフ波面センサーの室内試験機において、低次の波面揺らぎ(傾斜およびデフォーカス)を入射させ、その出力電場を計測した。その結果、計算機シミュレーションと似た出力電場を得ることができた。さらに、本波面センサーへの導入などを目指し、2偏光多波長揺らぎセンシング法の開発も併せて行った。光学系のアライメントや測定ノイズの考察などを行うことにより、波面揺らぎの2偏光2波長同時センシングの原理実証に成功した。
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