研究領域 | 散乱・揺らぎ場の包括的理解と透視の科学 |
研究課題/領域番号 |
21H05584
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
熊谷 幸汰 宇都宮大学, オプティクス教育研究センター, 助教 (90879628)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
|
キーワード | 計算イメージング / 構造化照明 / レーザー励起光源 |
研究実績の概要 |
本研究では,位相制御されたフェムト秒レーザーの物質励起により得られる光源の空間的配置を用いたホログラフィック励起構造化光源の確立と,それを用いた照明法による超広帯域計算イメージングシステムの構築を目的とする.本年度は,ホログラフィック励起構造化光源生成システムの構築とレーザー励起対象の選定を実施した.システムは,フェムト秒レーザーとガルバノスキャナ,計算機ホログラムを表示するための液晶空間光制御デバイスから構築された.レーザー励起対象は,波長の広帯域性と持続性を有する光源を生成できることから,水膜が選定された.薄い水膜は,2つのノズルから噴射される水を衝突させることで実現された.これらの光源および水膜生成システムを組み合わせることで,広帯域光源による対象の構造化照明を可能にした.本システムは,1 cm × 1 cmの光源生成領域を有し,分光器により可視領域,ガイガーカウンタによりX線領域の照明光源として機能することが確認された.つぎに,構造化光源を用いた計算イメージングの実現へ展開するために,光源の構造化および光強度取得を実行するシステム制御ソフトウェアと,得られた信号から対象を可視化する像再構成ソフトウェアの開発を実施した.結果として,可視領域においては,光源のラスタ走査により対象の可視化が実証された.また,X線領域においては,光源アレイの生成が実証された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,構造化光源を実現するシステム構築と,システム制御および像再構成ソフトウェアの開発まで到達した.さらに,実験を通して,本システムにより生成された光源が実際にイメージングを可能にする構造化照明として機能することを確認できた.可視領域外を用いたイメージングまで進捗が見られていないが,本年度でハードとソフト両方の準備が整ったため,これは次年度の取り組みのなかで到達できると考える.これらの成果は,本年度の研究実施計画で予定していた内容とおおむね合致している.以上の状況を鑑みるに,本研究課題はおおむね順調に進展している.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は,ホログラムとビーム走査に基づく光源配置の自由度を活かして,ランダムパターンやアダマールパターンのような各種構造化パターンを利用して,撮像時間の短縮,微弱光の利用,X線領域のような可視領域外のイメージングを試みる.これらの取り組みでは,圧縮センシングのような,少ない照明回数においても像再構成を可能とするアルゴリズムを,現状のソフトウェアに新規導入することが予想される.さらに,計算機ホログラムを利用した光源の多点同時生成を組み合わせることで,構造化パターンを効率的に生成する方法を検討する.また,次年度後半には,可視領域とX線領域のような異なる広い波長領域を同時にカバーできるイメージングシステムへ進展させる.ここでは,光学系の改築が予想され,構造化照明により得られた物体光を波長領域ごとに分岐し,それぞれの領域に感度を有する検出器に導くことで一挙に広帯域情報を取得できる形に発展させる.以上の取り組みで得られる成果により,国内および国際会議における積極的な発信,論文投稿まで行う予定である.
|