研究領域 | グリアデコーディング:脳-身体連関を規定するグリア情報の読み出しと理解 |
研究課題/領域番号 |
21H05608
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安部 健太郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70462653)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 転写因子 / 可塑性 / グリア / 炎症 / 記憶形成 |
研究実績の概要 |
近年,グリアが脳の可塑的変化に寄与することが明らかになってきているが,その分子メカニズムの多くは不明である.また,炎症やうつ病などの病態に関連してグリアの状態の変化が起きることが知られている.このような細胞機能や発達・病態に伴う変化の背景には,細胞の状態を規定する遺伝子発現状態の長期的な変化がある.遺伝子発現を制御する転写因子は細胞の状態を司る「かなめ」であり,細胞機能の遂行や病態の進行過程には,転写因子の活性のダイナミックな変化および慢性的な活性変化があると考えられる.本研究では研究代表者によって近年開発された“脳内転写因子活性プロファイリング”により,神経細胞およびグリア細胞での学習や病態に伴う細胞内在の転写因子活性の変化を定量解析する.病態に依存して活性が変動する転写因子を明らかにした上で,それらを人為的に操作することによる脳機能への介入を目指す.本年度,生体組織内細胞の内在転写因子活性を細胞腫特異的に定量評価することを可能にする、レポーターウイルスの開発と、それを利用した転写因子活性プロファイリング技術の確立に成功し,論文発表した(Abe and Abe iScience 2022)。この手法を用いて,マウス生体内および培養大脳皮質細胞におけるグリア細胞および神経細胞における転写因子活性の定量と比較を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度,生体組織内細胞の内在転写因子活性を細胞腫特異的に定量評価することを可能にする、レポーターウイルスの開発と、それを利用した転写因子活性プロファイリング技術の確立に成功し,論文発表した(Abe and Abe iScience 2022)。この手法を用いて,GFAPプロモーターおよびSynapsinプロモーター依存的なCreリコンビネースを利用し,マウス生体内および培養大脳皮質細胞におけるグリア細胞および神経細胞における転写因子活性の定量に成功した。その結果,グリア・神経細胞において活性の異なる転写因子を多数同定することに成功した。また,マウスの恐怖条件付け学習課題と独自開発した生体脳内転写因子活性定量法を使うことにより,学習の過程において神経細胞で転写因子活性の時間的にダイナミックな変化が起きること,炎症の誘発により炎症直後だけでなく,見た目上影響のなくなった炎症24h後の学習に影響が出ること,この際,脳内においてグリア関連遺伝子発現に変化がみられることを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度に引き続き,研究代表者によって開発された、細胞種特異的な脳内転写因子活性プロファイリング取得法を用い,学習時に海馬と大脳皮質において神経細胞およびグリア細胞で起こる転写因子活性化のパターンの変化や,末梢組織へのLPS注射による免疫細胞の賦活化により長期的な脳機能低下がおこる機構際の海馬と大脳皮質において神経細胞およびグリア細胞で起こる転写因子活性化のパターンの変化を明らかにする.次に,活性の変化の観察された転写因子の活性を神経細胞およびグリア細胞において人為的に制御しその操作が脳機能低下に及ぼす影響を調べる。以上の解析を元に炎症時の脳機能低下を軽減する手法を探索する。
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