公募研究
ストレスはさまざまなの精神疾患の発症に関係している。また同じストレスを受けても、個々の適応力の差で、脆弱性とレジリエンスに分かれるが、これらの二つの違いを説明できる生物学的機序は明らかでない。応募者らは、これまでストレス後の脆弱性とレジリエンスに、迷走神経を介する脳-腸相関が重要な役割を果たしている可能性を報告した。研究代表者らは、コロニー刺激因子1受容体阻害薬の投与は、脳内ミクログリアの除去だけでなく、腸内細菌叢および腸内細菌が生成する短鎖脂肪酸濃度を変化せることを報告した。さらに、ある種の腸内細菌叢の分布と脳内ミクログリアのマーカーとの間に相関関係があることを見出し、腸内細菌が脳内ミクログリアを制御している可能性を報告した。また、ストレスを与えてもうつ様行動を示さないEphx2遺伝子欠損マウスに、社会的敗北ストレスでうつ様行動を示すマウスの腸内細菌叢を移植するとうつ様行動を示すことを見出した。さらに腸内細菌叢解析で見出した腸内細菌を移植するとうつ様行動を示すが、横隔膜下の迷走神経切断を施行すると、うつ様行動を示さなかった。さらに、脾臓は免疫系の重要な臓器であるが、うつ病などの精神疾患との関連はよく知られていない。本研究では、マウス脾臓への神経を切断すると、リポポリサッカライド投与による炎症性うつ様行動や腸内細菌叢の異常が抑制される可能性を得ている。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、実験も進んでおり、論文投稿に至った。
計画書に記載している、インターロイキンIL-6の安定化分子であるArid5a遺伝子欠損マウスのストレスレジリエンスにおける腸内細菌の役割を引き続き調べる。以前、我々が報告したうつ様行動を示すα7ニコチン受容体遺伝子欠損マウスのうつ様行動における迷走神経切断や脾臓神経切断の影響を調べる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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